メカニカルジョイントの開発
- 2019.06.20
- カテゴリ: 知識|Knowledge
|配管と管継手
液体や気体などの流体を管の中を通して送る設備が「配管」です。
また、その配管を接合して、直方向に延長したり、方向を変える(エルボ)、分岐させる(チーズ)、径を絞る(レジューサ)、止める(キャップ)などのための機材が「管継手」です。
「管継手」は従来、「溶接式」または「ねじ込み式」が一般的でした。
最も信頼度が高いとされる「溶接式」ですが、接合する上で高い溶接技術が求められ、その設備も大がかりでコスト髙になる傾向にあり、その用途は限られておりました。
また、「ねじ込み式」は、比較的、低コストで接合が可能ですが、その接合品質の均一性を保てないのが問題でした。
加えて、工事の大型化、工期の短縮、作業者の不足など、配管に限らず、建築工事全般を取り巻く制約も厳しくかつ多様化して来ました。
|ステンレス配管とメカニカルジョイント
配管あるいは管継手が抱える問題を解消すべく開発が進んだのが「メカニカルジョイント」です。
「メカニカルジョイント(mechanical joint)」とは、「機械式」接合の「管継手」のことです。
特徴は、ゴムシール材等の密着によって接合部の止水を行う構造や専用工具等を使用して接合することで、接合品質の均一性が可能なところです。
また、「溶接式」や「ねじ込み式」の接合作業と比べ工期短縮と施工費の減額が可能となります。
しかしながら、メカニカルジョイントは、付属パーツが多いことからどうしても、管継手単体の価格が割高になる傾向にあります。
そこで、ベンカンが取り組んだのが「ステンレス配管」対応の「メカニカルジョイント」です。
ステンレス配管は、「高い強度」、「高い耐久性」、「優れたクリーン性」、「リサイクル性」などの優れた「配管」です。
しかしながら、「溶接接合」や「ねじ込み接合」では、「炭素鋼配管(鉄管)」と比較すると難易度が高く、その施工品質を管理するのが容易ではありません。
それ故に、施工費が高くなるだけではなく、そもそもの材料費も割高でした。
結果的に「ステンレス配管」は、素材としては優れていることは認知されながらも、施工の難易度と高額な費用から、食品や医薬品などの工場、浄水場、研究所、官庁舎、ホテルなど、衛生性や重要度の高い限られた施設だけで採用されていました。
その様なジレンマの狭間にあった「ステンレス配管」だからこそ、「メカニカルジョイント」のメリットを活かせると考えたのです。
|モルコジョイントの開発
先行して、「一般配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3448)製品名:SUパイプ」が開発されました。
ステンレス鋼の特性である高い強度を活かし、従来の「配管用ステンレス鋼鋼管 JIS G 3459」の管厚を50%~40%程度に薄肉にすることに成功しました。
薄肉にすることで、60%~70%の軽量化を実現(右表参照)させると共に、材料費の低減も実現できました。
対して、ベンカンでは、まず、この「ステンレス配管」に対応する「メカニカルジョイント」を開発することで、住宅やビルなどの一般配管分野にも用途を拡大できると考えました。
対応する「メカニカルジョイント」として、ベンカンが開発したのが、「モルコジョイント」です。
「モルコジョイント」は、ヨーロッパで開発された技術をベースとしたもので、ゴムシール材が内臓された管継手の本体に、「SUパイプ」を挿入した後に「専用締付工具」で所定箇所をプレス(密着)することによって接合部の止水を行う構造です。
1975年に発売された「モルコジョイント」は、「溶接式」や「ねじ込み式」と比べ接合時間の短縮(VA提案:配管の接合時間比較)や材料・労務コストの低減(VA提案:材料変更)
が可能となり、ステンレス配管の一般配管への普及に貢献しました。
|メカニカルジョイントの多様化
「メカニカルジョイント」の登場により「ステンレス配管」の用途の幅が広がりました。
現在、社会的な課題の一つとされているのが、「サステナブル(sustainable)社会」の構築です。
持続性のある社会づくりとなりますが、建築分野においても「サステナブル建築」として重要視され取り組まれております。
ベンカンと致しましては、「ステンレス配管」こそが現在考えられる「サステナブル配管」であると捉えており、「SUSTAINABLE LIFELINE®」と「ステンレス配管のベンカン®」をブランドとして掲げて取り組んでおります。
同時に「メカニカルジョイント」に対する多様性も高まりました。
例えば、プレス式継手の「モルコジョイント」は、現場での施工管理機能を高めることが求められるようになり、セーフティー機能付きの「ダブルプレス」へと進化しております。
また、ねじ込み接合に慣れた作業者向けに開発されたのが拡管式継手「BKジョイントⅡ」です。
更には、より手軽に接合できるように開発されたのが専用工具を使用せずにワンタッチ接合が可能な「EGジョイント」です。
また、「メカニカルジョイント」は、お客様の声に耳を傾けることで配管材の多様性も生み出し始めています。
例えば、「ステンレス配管」用の「モルコジョイント」からの応用として開発され「CUプレス」は建築用銅配管対応の「メカニカルジョイント」です。
既設の銅配管からステンレス配管に変換させる「CS変換ソケット」も開発しております。
同様に「JPジョイント」は、架橋ポリエチレン・ポリブテン配管対応のメカニカルジョイントです。
今後、ベンカンでは、このメカニカルジョイントのノウハウを活かして、戸建住宅、集合住宅などの住まいやホテル、商業、インテリジェントビル、病院、プラントなどの多様化する各施設の各種配管に対して様々なご提案をさせていただきます。
近年では、新素材として注目されている「冷媒用アルミ配管対応のメカニカルジョイント」の開発にも取り組んでいるとおり、サステナブル社会構築に貢献するため、現在だけでなく未来を考えた 配管の開発と供給を通して信頼ある ライフラインの構築をご提案します。
takehiko wagatsum