ガルバニック腐食
- 2017.04.07
- カテゴリ: 知識|Knowledge
|イオン化傾向
単金属が水または電解質中(電気が流れやすい状況)で、金属結合から電子(e–)を放出して、陽イオンになり易い順に並べたものを「イオン化傾向」といいます。
また、金属をイオン化傾向の大きい順に並べたものを「イオン化列(イオンかれつ)」といいます。
この中に金属ではない水素(H2)が入っております。
これは陽イオンになろうとする性質がある水素(H2)を比較基準とするためのものです。
例えば、基準である水素(H2)よりもイオン化傾向が大きい金属は、イオンになりやすい金属となります。
水分は空気中にもありますので、陽イオン化して、空気中の酸素などと結びついて酸化物を作ろうとします。
つまり、「腐食しやすい金属」、「錆びやすい金属」、つまり「卑金属(ひきんぞく)」となります。
対して、金(Au)を筆頭に、水素(H2)よりもイオン化傾向が小さい金属は、「腐食しにくい金属」、「錆びにくい金属」、つまり「貴金属(ききんぞく)」と呼ばれています。
<カリウム-カルシウム-ナトリウム-マグネシウム-アルミニウム-亜鉛-鉄-ニッケル-錫-鉛-水素-銅-水銀-銀-白金-金>
|ガルバニック腐食

▲ステンレス配管(左側)と炭素鋼鋼管(右側)の直接接合事例
「イオン化傾向」の順位は、それぞれの金属が持つ標準電極電位(以下、電位)の大きさで決まります。
電位が大きなほど、イオン化しにくい金属ということになりますので、腐食しにくいことを意味します。
つまり、イオン化傾向が小さい程、電位が大きいということです。
これを象徴する現象があります。
異なる金属を水または水溶液中(電気が流れやすい状況)で接触させた場合、その電位差が大きくなるのと比例して、電位の低いの金属の陽イオン化がますます促進されます。
つまり、イオン化傾向の大きな金属、電位の小さな金属が急激に腐食してしまう現象です。
これが「異種金属接触腐食」あるいは、「ガルバニック腐食(galvanic corrosion)」です。
この現象は、乾電池の理論でもあります。
例えば、マンガン乾電池であれば、電位の低い金属(イオン化傾向の大きい金属)である二酸化マンガンが正極で、電位の高い金属(イオン化傾向の小さい金属)である亜鉛が負極に相当します。
この場合の電解質溶液は塩化亜鉛が用いられています。
正極と負極をつなぐことで、電流は、電位の高い金属から低い金属に流れ、乾電池内(溶液中)では電位の大きな金属から電位の小さな方に流れることで回路を形成して発電しています。
また、「ガルバニック腐食」を「電食(でんしょく)」と呼称される場合もありますが、防せい防食用語(JIS Z 0103)上では、「迷走電流腐食」のこととなりますので異なる現象となります。
|配管における異種金属接合
配管においても、異種金属の配管が存在するため、その接合時には、「ガルバニック腐食」に注視しなければなりません。
例えば、貴金属で配管材として使用されている代表が銅(Cu)です。
また、一般的なイオン化列には掲載されていないステンレス鋼も銅と同等以上の高い電位を持った貴金属となります。
互いが貴金属で、近似値の電位を持った銅管とステンレス配管を直接接合しても、基本的には「ガルバニック腐食」は起きません。
対して、卑金属の配管材の代表が炭素鋼です。
炭素鋼管の表面を加工した配管材に「塩化ビニルライニング鋼管」や「亜鉛メッキ鋼管」などがあります。
また、今後、新素材の配管材として注目を浴びているアルミニウム合金管も卑金属となります。
これらの配管と貴金属である銅管やステンレス配管を直接接合すると卑金属側の配管が「ガルバニック腐食」で錆びてしまう可能性があります。
但し、使用環境によっては、卑金属側だけの腐食で留まることなく、貴金属側にも何らかの不具合が生じる場合もあると報告も受けております。
そのため施工者が、異種金属の配管を接合する場合には、その金属の電位特性を確認して十分に注意する必要があります。
これは、管だけに限らず、ポンプ、バルブ、給湯器等の機器類にも該当します。
|ステンレス配管と異種金属接合
ステンレス配管と卑金属の異種金属管や異種金属製の機器類(ポンプ、バルブ、給湯器等)を接合される場合は、「直接接合の可否」を必ずご確認下さい。
その上で、上記表の否(×)の場合には、ステンレス配管と異種金属類が接しないように適正な「絶縁処理」を施して接合していただくことになります。
「絶縁処理」とは、「ガルバニック腐食」の現象を発生させないために電流が流れる回路を遮断するものです。
その多くは、異種金属管に絶縁体を噛ませる構造となります。
例えば、ベンカンの絶縁フランジ接合をご紹介します。
異種金属側のフランジに対して、同規格のコートフランジ(CF)とラップ付短管(LT)、絶縁パッキン(柄付)を組み合わせることにより絶縁処理を施すことが可能です。
また、同じフランジ接合でも、コートフランジ(CF)ではなく、絶縁ボルト・ナットで絶縁処理を施す方法もあります。
その他、小径サイズにおいては、異種金属側の仕様に応じた数種類の絶縁ユニオンをご用意しております。
尚、「絶縁処理」および「絶縁処理用の部材」の詳しい取り扱いは、施工要領書をご確認いただくか、ベンカンへお問い合わせください。
「ステンレス協会」では、適正環境下で要領に則った施工を施せば、「ステンレス配管」は、給水(25℃)で100年以上、給湯(80℃)でも40年以上の耐久性を発揮するとしています。
その優れた耐久性を最大限に発揮する意味でも要領に則った施工をお願い致します。
takehiko wagatsuma