マネジメント「壁マネジャー」
- 2017.08.23
|エンパワーメント
最近は、部下に嫌われたくないがために叱ることの出来ないマネジャーが増えているといいます。
これは、ある意味、改善を促すことを放棄した行為であると思います。
反対に何でも事細かい指導をし、部下を意のままに操りたいマイクロチェックを行うマネジャーもいます。
最悪、自分の指示通りに動けなかった部下に対しては、パワハラ的に怒りつけるケースもあると言います。
そんな行き過ぎた「干渉」で指導されたスタッフは、自律が損なわれ、何れ自分で考えて動くことが出来なくなってしまいます。
そこで重要視されるのが、配下部署や個人の自律性の育成です。
そのためにも経営は、組織の目標を組織全方位に明確に示して共有させなければなりません。
また、配下部署や個人が主体性を持って能動的に徹底して行動できるような環境を整備して支援することも大切となります。
部下に対して権限を委譲して、能動的なマネジメント、つまり、組織の目標を達成するための意思決定権を現場に委ねる取り組みに「エンパワーメント」があります。
もちろん、単に委ねるだけでは、「放任」あるいは「丸投げ」行為となってしまいます。
つまり、「エンパワーメント」には、組織の自律性の育成と最終的な責任には支援必要となるのかと思います。
|壁マネジメント
自分自身の体験であったり様々な指導者を見て来て、結局は、バランスであるのだと思います。
部下の行動を望ましい方向に変える適度な「干渉」は、「介入」と呼ばれたりもしています。
そして、部下が安易な方向に流れないように壁となる行為がコンサルタントの山北陽平先生(画像:右)が提唱する「壁マネジメント」です。
それを踏まえて、5つのマネジャーに分類されます。
(1)指示だけマネジャー
指示はするものの、指示に具体性(5W1H)がなく、結果、行動への介入もできないため「望ましくない行動」に壁が作れていないマネジャー。
(2)漏れているマネジャー
介入はするものの介入ルールが徹底されておらず、成果を半減させてしまっているマネジャー。
(3)押されマネジャー
壁を作るものの、部下の強い反発によって壁が押し戻されてしまい、「望ましくない行動」を堰き止められないでいるマネジャー。
(4)そこじゃないマネジャー
「望ましくない行動」に壁を作るどころか、あろうことに「望ましい行動」に壁を作ってしまうドリームキラー的なマネジャー。
(5)壁マネジャー
人は、現状を現状のまま維持したいと思う無意識下の心理的な欲求がありますので、楽な「望ましくない行動」に流れてしまいがちです。
マネジャーには、積極的に部下の行動に介入し、部下が「望ましくない行動」に流れないように壁となって堰き止めて成果に結び付ける使命があるというものです。
そのための介入には、バランスがあると考えます。
例えば、新卒者のスタッフを「放任」して自分で考えることを求めても、経験が浅いだけに限界があります。
対して、ベテランスタッフに、「干渉」し過ぎても、その能力を活かすどころか、潰しかねません。
新卒者であれば、(3)放任して考えさせて、(7)介入する。
入社5年目であれば、(5)放任して考えさせて、(5)介入する。
入社10年以上であれば、(7)放任して考えさせて、(3)介入する。
この様なイメージが大切なのかと考えます。
また、「介入」のスタイルも様々であると思います。
①問題があったら即座に「介入」するスタイル。
②定期的に報告させて、それに応える形で「介入」するスタイル。
③部下から相談してくるのをジッと待って、相談してきた時に「介入」するスタイル。
冒頭の「放任」スタイルの優れた指導者ですが、実際には丸投げではなく ③であるケースが多いのかもしれません。
|指導者としての自覚とマネジャー育成
正直、私は、③を実践できる様な大きな器の指導者ではないために、①と②の複合タイプを実践しています。
まず、部下たちが「あるべき姿」から能動的に逆算して行動を考えられるように戦略などの全体像を伝えるようにしています。
但し、①を強くし過ぎて、「干渉」が行き過ぎない様に意識するようにしています。
また、②は、部下からの能動的なホウレンソウを促すようにしております。
勿論、能動的にホウレンソウの出来ない部下に対しては、強めの「介入」による指導を徹底しております。
大切なのはスタッフの技量を見極めて、「放任」しているかの如く自由に行動させることができること。
そして、何らかの形で、その行動を評価、検証し、より成長を促すための「介入」と言う指導ができること。
その様な壁マネジャーの存在であり、育成なのかと思います。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma)
取締役 最高執行責任者(COO) 兼 執行本部 本部長