マネジメント「経営資源」
- 2018.05.02
|マネジメント
人は一人で成せる目標には限界があります。
それ故に、より大きな目標を達成させるために、同じ意志を持った個人が集って組織を形成します。
しかしながら、目標達成に対する意志が同じであっても、それを実現させるための方法論は、個人それぞれです。
また、それぞれの能力も均一ではありませんし、それぞれに、長所もあれば、欠点もあります。
それ故に、組織の存在意義を高めるためにも、マネジメントを機能させ、それぞれの長所を活かし、それぞれの欠点を補い合いながら、より大きな目標を達成させることが大切です。
組織である企業が、成長するための活動には多くの資本や労働力が必要であり、そして更なる成長には、より多くの経営能力が必要となります。
そのために欠かせないものとして、エディス・ペンローズが提唱したものに経営資源があります。
経営資源とは、「ヒト」、「モノ」、「カネ」と例えられるように戦略人事、資産管理、資金調達、情報活用などの諸々の力の集合体です。
その良質な経営資源をどれだけ確保できるかは、企業の競争力を決定づけるとも言われています。
また、企業にとってのマネジメントでは、それらの経営資源を如何に活用してバリュープロポジションともいえる価値を生み出せるかにかかっています。
まるで、異なる形のたくさんのピースをハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものです。
|戦略人事(ヒト)
経営資源の筆頭である「ヒト」、つまり人事の重要性が高まっています。
従来型の人事とは、労務・法務などの制度やマニュアルなどのオペレーション業務ばかりに固執した保守的、定型的で、場合によっては、マックジョブともいえる前例主義がほとんどでした。
対して、現代では、労働力不足が深刻化していることや、それを補う意味での機械化の技術革新によって、人材には、よりクリエイティブ性のある能力が求められるようになっています。
反面、従来の経営戦略では、戦略的に人事を捉える意識が低かったといえます。
故に、今後は、人材と組織の側面から変革をリードしていく戦略的人的資源管理(以下、戦略人事)が重要視されています。
ベンカンの従来組織は、中間管理職層が多いのが問題でした。
組織規模に対して、中間管理職の比率が高い組織は、各部署の意思決定速度が遅くなったり、一般職、特に若手の自律性が損なわれ易いともいわれています。
そこで、中間管理職の比率を適正化させることで組織の統制力であるトップダウンを強化させております。
加えて、社員の考えを吸い上げ易い環境づくりやキャリアアップを促進させ、その自律性を高め、ボトムアップを強化する戦略人事を推進しております。
|資産管理(モノ)
企業が事業を成長させ続けるためには、価値を生み出し続ける必要があります。
製造業の場合の価値とは、販売対象である製品となります。
しかし、製品は、何もないところから生まれることはありません。
開発するための研究設備、製造するための製造設備、関連の施設・土地(有形固定資産)などが必要となってきます。
つまり企業は、これらの資産に投資を行い、リターンを得ることで、「企業を成長させ続けること」になろうかと考えます。
製品やサービスは、企業が提案する事業価値そのものであるとも言えます。
企業が成長し続けるために、常に製造、品質、技術などの様々な切り口から、事業価値を拡大させる取り組みが必要となります。
|資金調達(カネ)
企業を維持および成長させ続けるためには、常に利益を出し続けなければなりません。
利益には質があり、キャッシュフローに基づいたカネ、つまり資金が重要となります。
製品を開発するには研究開発費が必要となります。
生産するにも設備投資や資材の購入費用が必要です。
雇用する社員の給与の支払いなども必要です。
そのため事業(販売)による調達だけではなく、金融機関からの借入れによる調達など、企業が成長するためには、資金を如何に確保し、有効に活用するかが重要となります。
|情報活用(DX)
情報は、経営する上で有益な、知的財産や無形固定資産、その他の様々なデータなどを意味します。
知的財産とは、人間の精神活動の結果として創作されるアイデア等無形のものの中から見出された財産的価値となります。
IT(Information Technology)などのデジタル技術の進化と共にに、この知的財産や情報などの形のない資源の経済価値が高まり、重要視されるようになりました。
結果、情報は、デジタルトランスフォーメーション(DX)とも称される通り、大きく経営を転換させる可能性を持った重要な経営資源となってきています。
|経営資源のポートフォリオ
ヒト、モノ、カネ、情報・・・今後も環境の変化により新しい経営資源のあり方が加わってくる可能性があることは容易に想像することができます。
経営資源におけるポートフォリオ(Portfolio)とは、ヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源の組み合わせることを意味します。
そもそも、如何なる企業であっても、経営資源は有限なものです。
企業は、その事業別、あるいは市場別などにターゲティングを行い、どこに、どの経営資源を、如何なる割合で投じて行くかを見極めながら、有効に活用して行くことが求められます。
故に経営としては、それぞれの収益性、安全性、成長性などを加味して、このポートフォリオを策定することになります。
経営資源を無駄にすることなく、有効に活用することで、事業価値は拡大します。
また、忘れてならないのは、短期的に全てを投じるだけではなく、予測できない将来のリスクに対する備えや将来の投資に向けて経営資源を蓄積することも重要であることです。
企業の成長とは、経営資源を投入と利益の獲得のサイクルを継続することとも捉えられるかもしれません。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma)
取締役 最高執行責任者(COO) 兼 執行本部 本部長