ウサギとカメ
- 2012.12.20
|ウサギとカメ
能力とは、持ちえたスキルではなく、それを意識して発揮してこそなのかと思います。
イソップ寓話やラ・フォンテーヌが書いた寓話詩にも所収されており、日本では、童謡にもなっているのが「ウサギとカメ」です。
「もしもし カメよ カメさんよ 世界の内に おまえほど 歩みの のろい 者はない どうして そんなに のろいのか」
「なんと おっしゃる うさぎさん そんなら おまえと 駆け比べ 向こうの 小山の 麓まで どっちが 先に 駆け着くか」
ご存知の通り、物語では、圧倒的に足が速いはずのウサギがカメに負けてしまいます。
ウサギですが、自分の足の速さを過信して、途中で一眠りしたまま、寝過ごしてしまい、カメに抜かれてしまうのです。
結果的に足の遅いはずのカメが、その歩みを止めなかったことにより勝つ訳です。
この物語では、負けたウサギからは謙虚になることの大切さを、勝ったカメからは努力し続けることの大切さを伝えたかったのだと思います。
|働かない おじさん
昨今、企業で問題になっているのが「働かない おじさん」問題です。
本来、スキルの高いはずのベテランが、それを発揮できていないのです。
そこには、能力を発揮できる適正な職務に人材登用できていない会社側の責任もあります。
加えて、ベテランであるが故の、驕りともいえる現状維持バイアスが、それを妨げているとも考えられます。
人には誰にでも、現状を現状のまま維持したいと思う無意識の欲求があるといわれています。
それが、現状維持バイアスです。
過去の成果や積み重ねた実績は素晴らしいものです。
しかし、それが逆にプライドのようなものとなり、努力することに対する無意識の抵抗を生み出すのかもしれません。
しかし、それを理由に新しい努力が必要ないかといえば、それは違います。
まずは、冷静に現状の自分を受け入れることが、この現状維持バイアスを破るための第一歩であるように思います。
|自己観照
経営の神様とよばれる松下幸之助氏が残された言葉に「自己観照(じこ-かんしょう)」があります。
「自己観照」は、一般的な四字熟語ではなく、松下幸之助氏の造語であり、その多くの書物の中に登場します。
「自分で自分を、あたかも他人に接するような態度で外から冷静に観察してみる、ということです。いいかえると、自分の心をいったん自分の外にへ出して、その出した心で自分自身を眺めてみるのです。」(「人生心得帖」松下幸之助 PHP研究所)
「自省の強い人は、自分というものをよく知っている。つまり、自分で自分をよく見つめているのである。私はこれを”自己観照”と呼んでいるけれども、自分の心を一ペん自分の身体から取り出して、外からもう一度自分というものを見直してみる。これができる人には、自分というものが素直に私心なく理解できるわけである。こういう人には、あやまちが非常に少ない。自分にどれほどの力があるか、自分はどれほどのことができるか、自分の適性は何か、自分の欠点はどうしたところにあるのか、というようなことが、ごく自然に、何ものにもとらわれることなく見出されてくると思うからである。」(「一日一話」松下幸之助 PHP出版)
「自己嫌悪」とは、自分の精神的な弱さが起因するスランプとも言えると思います。
その自分の弱さと向き合い軌道修正する作業とも言える「自己観照」は、自分自身をベンチマークとして、自分自身を成長させるために必要なことなのかと思います。
しかし、誤解してならないのは、謙虚になることは、遜ることではありません。
負けてばかりだと、ドメスティック(内向き)な価値観から、負け癖がついてしまい、勝つことに意識を切り替えられない人もいるかもしれません。
また、目標とも言えない目先のことを目指すことで、自己満足してしまう人もいるかもしれません。
この自分で勝手につくってしまった限界である現状維持バイアスを破ることが大切なのだと思います。
|リスキリング
実は、「ウサギとカメ」には「負けウサギ」という続きの物語があるようです。
のろまなカメに負けてしまったウサギは、仲間たちから恥晒しと罵られ、村を追われてしまいます。
しかし、オオカミが、自分が住んでいた村のウサギ達を狙っていることを知ります。
そこで、知恵を使ってオオカミを撃退して、村の仲間からの信頼を取り戻すという内容です。
現代の環境は、変動的で不確実性あり、さらに複雑で曖昧な時代だといわれています。
その様な状況下で、リスキリング(reskilling)という言葉が取り上げられるようになりました。
環境変化によって、デジタルを代表とする新たに必要とされるスキルも大幅に変化しています。
それに適応するために、 必要なスキルを獲得することがリスキリングです。
ベテランだからと現状で満足していて許される時代でもありません。
変なプライドから新しい行動を躊躇う場合でもありません。
また、出遅れたことによる、諦めのようなものを抱いている場合でもありません。
何度も何度も諦めずに、PDCAサイクルを回し続けることで、どんなに年をとっても成長し続けられるはずです。
足が遅いならば、足が速くなる努力を諦めずに続ける必要があります。
また、足が速くなったからといって、決して驕らず、謙虚になって努力し続けることが大切なのだと思います。
そんなベテランの努力する姿を後輩たちは、カッコいいと思ってくれると思います。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長