マネジメント「段取り八分」
- 2013.08.10
|マネジメント
人は一人で成せる目標には限界があります。
それ故に、より大きな目標を達成させるために、同じ意志を持った個人が集って組織を形成します。
しかしながら、目標達成に対する意志が同じであっても、それを実現させるための方法論は、個人それぞれです。
また、それぞれの能力も均一ではありませんし、それぞれに、長所もあれば、欠点もあります。
それ故に、組織の存在意義を高めるためにも、マネジメントを機能させ、それぞれの長所を活かし、それぞれの欠点を補い合いながら、より大きな目標を達成させることが大切です。
マネジメントとは、組織が、その目標を達成するために必要な機能と捉えるべきです。
まるで、異なる形のたくさんのピースをハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものです。
|段取り八分
父は、鳶職人でした。
鳶職(とびしょく)とは、建築現場などで作業する人達の安全性と作業性を考えて足場を作る仕事です。
足場は、建物と違って最終的には解体してしまうものなのですが、父は、その美しさにも、こだわるような職人でした。
手伝いをしていた時期もありましたが、そんな父の口癖は、「段取り八分」でした。
仕事の良し悪しは、段取り次第で、八分方が決まるという意味です。
足場の図面ですが、建物の規模によっては簡易的な場合や、頭の中で描くだけの場合も少なくありませんでした。
父は、そんな建物の図面と現場の状況を見て、どの様な足場が良いかイメージします。
そこから、長さの異なる単管類や様々な形状のジョイント類、足場板、番線(結束用の太い針金)などの材料と数量をはじき出し、調達して行きます。
また、抱える職人達の技量を見て、誰を、どの位置に配置して、どの様な工程で作業して行くかまでもイメージしてしまいます。
それまでは、何度か現場に足を運び、建築図面とやり取りしているのですが、イメージが固まると、とにかく、私達、手元は、気が抜けませんでした。
とにかく、父からのマシンガンの様な指示が飛び交うのです。
また、よくぞ、一人で、そこまでチェックすると思えるくらいに細部に渡って、作業精度を見ています。
父が気に入らないと、やり直しになることもありました。
それでも、キチンと納期までに完了させます。
それは、父の知識や情報など複雑な事象を概念化し、抽象的な考えや物事の本質を見極める能力(コンセプチュアスキル)の高さを見せつけられたとも言えます。
|逆算思考
あるゼネコンの所長から言われたことがあります。
「君のお父さんに任せておけば、どんな現場でも、キチンと納めてくれる。それでいて、美しい足場なので、解体するのがもったいないくらいだよ。」
私は、父を誇らしく思いました。
私は、父の仕事を継ぎませんでしたが、今の仕事に携わりながら、あらためて思うことがあります。
良い仕事をするためには、常に良い仕事とは何かを考え、それを具体化させる。
そして、良い仕事をするためには、まず、目標(期限とノルマ)を明確にする。
そして、その目標を達成するために逆算思考で、中期、短期で、いつまでに、何をすべきかを具体化させる段取りこそが大切なのだな・・・と。
決して、やらされ仕事や思いつき仕事の〝やっつけ仕事〟で良い仕事ができる訳がありません。
ましてや、良い仕事がそうであるように〝やっつけ仕事〟も相手に確実に伝わります。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma)
取締役 最高執行責任者(COO)兼 執行本部 本部長