指導者の存在意義
- 2016.09.15
|復活劇を支える指導者たち
スポーツの祭典と言えばオリンピックです。
2020年には、夏季大会としては二度目の国内開催となる東京オリンピックが開催されます。
今年は、その前哨戦とも言えるリオデジャネイロ・オリンピックが開催され、日本選手団は、過去最高のメダル数を獲得しました。
戦っているのは、当事者である選手であり、その努力と功績を讃えることを全く否定するつもりはありません。
しかし、団体競技であれば、チームにおいて、自分がどんなに活躍しても、他の仲間がミスをしてしまえば勝てません。
逆に自分がミスをしても、他の仲間が補ってくれれば勝利することもできます。
また、個人競技には、チームが存在しないかといえば、そうではないはずです。
決して一人だけで、ここまでに至った訳がありません。
何らかのチームがなければ、質の高い練習も出来ないはずです。
そう、決して一人で強くなることなどできないのです。
そして、そのチームをマネジメントする立場にあるのが指導者です。
今回のオリンピックにおいて、二つの競技の復活劇が印象的でした。
そして、それを支えた指導者の存在もまた、印象的でした。
|シンクロナイズドスイミング
日本のシンクロナイズドスイミングは、オリンピックの正式種目になった1984年以降、6大会連続でメダルを獲得していました。
そして、その立役者が井村雅代ヘッドコーチだったと言われています。
ところが、彼女が勇退して以降、日本はオリンピックで2大会連続でメダルを逃し、低迷します。
井村コーチは、お家芸復活のために再び全日本を託されました。
メダルを獲るために何をすれば良いかを知っていると断言し、鬼コーチとして妥協を許さぬ厳しい練習を課したとされています。
そして、リオデジャネイロ・オリンピックでは、見事に選手たちは応え、デュエットとチームで3大会ぶりとなる銅メダルを獲得しました。
あるテレビ番組では、褒めて伸ばす方法を引き合いに出したキャスターを一蹴しました。
「メダルを獲ることを目標としている以上、すべきことをしようとしない選手を褒めることなどできる訳がない。褒めてしまったら、選手がメダルを獲れないレベルで妥協していまう。」
|柔道
発祥国としてメダルどころか、金メダルを義務付けられているかのような存在が柔道です。
他の競技で銅メダルを獲って讃えられるのを横目に、柔道選手は銅メダルでバッシングを受けます。
そのような中、2012年ロンドンオリンピックでは、男子柔道としては史上初めて金メダルがゼロに終わり、発祥国としての威信は失ってしまいました。
その原因は様々なれど、ロンドンオリンピック後に就任した井上康生監督は、様々な改革を行いました。
特に、階級別の担当コーチ制を導入したのです。
従来は、各選手に特定のコーチが居なかったために、指導陣とのコミュニケーションが取り難かったと言います。
しかし、各階級に担当コーチを就けたことにより、選手と担当コーチだけではなく、関係者間のコミュニケーションそして信頼関係が高まりました。
結果、リオデジャネイロ・オリンピックでは、男子柔道は金メダル2、銀メダル1、銅メダル4と7階級全てでメダルを獲得するにつながったのだと思います。
「(この結果は、)選手を信じることだなと思います。最高の選手と最高のスタッフと、この最高の舞台で戦えた幸せってものを感じました。」
とは、井上監督の涙ながらのコメントです。
|指導者の存在意義
指導者の大きな役割は、そのチームをマネジメントすることです。
マネジメントとは、組織の目的を果たすことです。
オリンピックは参加することに意義があるとされながらも、やはり指導者としての成果は勝利することであろうかと思います。
これは企業の組織でも同様です。
その組織の目的を果たすために、指導者であるマネジャーは、様々な取り組みをします。
役割なのだから当たり前といえば、当たり前です。
しかし、時には、非常に厳しい目的や目標を背負わなければならないのもマネジャーです。
今回、リオデジャネイロ・オリンピックを通して、メダル獲得(成果)には、妥協を許さぬ本人の努力と、嫌われる勇気と信頼を兼ね備えた指導者(マネジャー)の存在が欠かせないのだと再認識しました。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma)
取締役 最高執行責任者(COO) 兼 執行本部 本部長