マネジメント「透察力」
- 2021.01.01
|マネジメント
人は、一人で成せることには限界があります。
故に、より大きな成果を得るために、同じ目的を持った人たちと組織を形成します。
つまり、共通の目的を果たすことこそが、組織としての存在意義であるともいえます。
しかしながら、組織を構成する一人一人が、同じ目的を共有していても、それを実現させるための方法論は、個人それぞれです。
また、それぞれの能力も均一ではありませんし、それぞれに、長所もあれば、欠点もあります。
その様な状況下にあって、組織をして成果をあげさせるための取り組みがマネジメントです。
マネジメントの提唱者であるピーター・ドラッカー氏は、その著書である「マネジメント 基本と原理」の中で、「マネジメントは、組織に特有の使命、すなわち、それぞれの目的を果たすために存在する。」と示しております。
そのため、経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報などの異なる形のたくさんのピース(要素)をハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものなのかと考えます。
もちろん、そのパズルは、事前に答えが用意されている訳ではないことはいうまでもありません。
|VUCA時代
高度経済成長期には、モノ不足からもたされる「作れば売れる」時代が続きました。
そして、国際的にも日本の製造業の高い技術力が評価され「良いモノを作れば売れる」時代に遷りました。
しかしながら、現代では技術力だけに頼ったビジネスモデルでは、既に限界を迎えていることは明らかです。
いつまでも「良いモノを作れば売れる」様な神話的な思考に依存していては、この限界から脱却はできません。
現代の環境を、1990年頃から使われた軍事用語を流用してVUCA(ブーカ)環境と表現される場合があります。
・Uncertainty(不確実性):発生する問題や出来事が突発的であったり性質の予測がつかないこと
・Complexity(複雑性):多数の理解困難な原因、抑制因子が複雑に絡み合っていること
・Ambiguity(曖昧性):前例がなく、出来事の因果関係もなく、5W1Hの特定が困難で不明瞭なこと
さらに、2020年に、世界規模で襲った新型コロナ感染は、VUCA環境の予想の範疇すらも超えるような事態となっています。
既に、この予想外の事態に、政府の支援も行き詰り、多くの企業は疲弊しています。
また、企業に限りませんが、SDGs(持続可能な開発目標)にも言える通り、危機的な環境維持や改善に地球規模で取り組まねばなりません。
結局は、この環境の現状と短期的な将来を分析して、自助対応により、この事態を耐え、躍進に結びつける中長期の戦略を講じて行く以外にないと考えます。
|透察力
過去、時のヒトとなり、様々なメディアで讃えられていた企業の経営者や政治家、有名人が、考えられないようにあっけなく姿を消したり、失脚する時代です。
一時的に輝くのであれば、実力や努力が不要とはいわないまでも、虚勢やフロックでも可能なのかもしれません。
「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む。」
これは、学問のススメの福沢諭吉氏の言葉です。
人には現状を現状のまま維持したいという無意識の欲求があるといいます。(現状維持バイアス)
しかしながら、現実は、新しいことにチャレンジしないヒトは現状を維持することもできません。
良くも悪くも現状で満足あるいは妥協することなく、新しいことにチャレンジすることで躍進することができるという意味合いです。
今の時代だからこそ、尚のこと相応しい言葉であると思います。
前出のドラッカー氏は、企業の目的は「顧客の創造」であると断言されています。
「顧客の創造」とは、企業の社会における存在意義(パーパス:Purpose)でもあります。
また、「自分が得意だと思っていることに溺れるな。物事の本質を鋭く透察する心を持て」とも提しています。
透察とは、物事の本質を見極め、先を見通すことであるといえます。
確かに厳しい時代ですので、目先の成果に拘らなければ、将来がないともいえます。
しかし、目先だけに拘っていても、将来はありません。
現在の存在意義を活用して、如何にして、将来の存在意義を構築できるかは、透察力にかかっているともいえます。
透察することによって、将来のあるべき姿(ビジョン)あるいは、目標を描き出し、それらに焦点を当てることで、可視化された課題に取り組んで行くことが重要なのだと考えます。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma)
代表取締役社長