戦略人事「テレワーク」
- 2021.06.22
|戦略人事
企業は、その目的を果たすために、経営理念に基づいた戦略を立案し、それに沿って事業活動をマネジメントします。
そして、それらの活動には、資金調達、販売、人材管理、経営管理などの諸々の力の集合体である経営資源が不可欠となります。
経営資源とは、一般的にヒト、モノ、カネ、情報といわれています。
この経営資源を必要な部署や取り組みに供給するのも、インフラストラクチュアの取り組みとなります。
なかでも、筆頭の「ヒト」、つまり人事の重要性が高まっています。
日本経済再生に向けて、政府が推進を表明したのが「働き方改革」です。
現代の仕事と生活をとりまく環境のあり方は、複雑な課題と問題を抱えています。
内閣府が掲げる「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」では、国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会づくりを目指すとされています。
これらの取り組みによって労働生産性を改善し、その成果が労働者に分配されることで、需要の拡大を図り成長と分配の好循環を構築させようとするのが働き方改革です。
具体的には、政府が働く人たちの視点に立って、労働制度の抜本改革を行うと共に各企業も労働条件、場合によっては、文化や風土までも変えて行こうとするものです。
しかしながら、政府主導で、一方的に、各企業が労働条件を変えられるほど、簡単なことではありません。
故に社員個々の職務、能力、そして家庭環境などを考慮した戦略的人的資源管理(戦略人事)の重要性が高まっています。
|テレワーク
「働き方改革」の手法の一つに「テレワーク」があります。
「テレワーク(telework)」とは、インターネット技術を活用して、時間や場所の制約なしに働くワーキングスタイルです。
離れたところを意味する「tele」と働く「work」を合わせた造語です。
「テレワーク」ですが、その働く場所によって、いくつかに分けられ始めています。
■在宅勤務
最も一般的なのが、自宅を利用して就業場所とする在宅勤務と呼ばれるものです。
通勤時間の削減、移動による身体的負担の軽減が図れ、時間の有効活用ができます。
また、自宅であることから育児や介護などをしながら就業できる可能性もあります。
■サテライトオフィス
サテライトオフィスとは、事業拠点である本社、支店、営業所などとは別に設置されたオフィスのことです。
一方、サテライトオフィスは従業員の働き方に重点を置いた呼び方といえます。
事業拠点に対して、例えば外勤社員の主な活動エリアは、東西南北さまざまです。
また、首都圏などは郊外から通勤する社員も少なくなく、多くの時間を要してしまいます。
そこで、通勤しやすい場所に作られた、サテライトオフィスを設置することで働き易い環境をつくることが出来ます。
■コワーキングスペース
企業がサテライトオフィスを設置するには、多額の費用が発生してしまいます。
対して、コワーキングスペースとは、複数の企業で共有し、業務スペースや会議室、打ち合わせスペースなどの環境を整えたシェアオフィスとなります。
実際の複数の企業が共同で設置する場合もありますし、民間企業や公共施設もあります。
民間の専門企業の中には、複数拠点のコワーキングスペースを提供しており、ユーザーは自由に各拠点のコワーキングスペースが利用できるようなサービスを提供されている場合もあります。
■モバイルワーク
電車や新幹線、飛行機の中などで執務を行うケースで、移動の合間にカフェなどで行うものも含まれます。
■ワーケーション
より福利厚生の傾向が強く、導入には課題も多々ありますが、旅行先などのリゾート地で執務を行うケースです。
業務が忙しかったり、連休の取りにくい業務の社員がバケーションと業務を同時に行うことが可能です。
|今後の導入の方向性
働き方改革として、「ワーク・ライフ・バランス」の向上策として期待される「テレワーク」です。
しかしながら、導入する上で遠隔地での就業であることによるコミュニケーションが低下が懸念されます。
結果、職種にもよりますが、生産性の低下や管理・評価の難しさから、なかなか普及して来ませんでした。
ところが、2020年からの世界的なコロナ禍においては、「テレワーク」が加速度的に普及しています。
新型コロナ感染のリスクである三密(密閉・密集・密接)を避ける意味で、出社による就業が抑制されたためです。
合わせて、インターネット技術の急速な対応により、オンラインによる就業環境が整備されました。
例えば、WEB会議によって、社内勤務以上にコミュニケーションが取れているという事例があるくらいです。
また、会社に出社する社員が減ったことにより、オフィスの維持費や通勤による交通費の削減になっている企業もあります。
その他、今回のコロナ禍に限りませんが、パンデミックや災害時においても、事業を停止させないためのリスクヘッジ策(BCP)にもなることが分かりました。
しかし、コロナ禍に対応するためのテレワークなら問題ありませんが、制度として導入するには壁も少なくありません。
そもそも、テレワークを実施することで、生産性が低下させてはならないということです。
例えば、ベンカンは、製造業です。
現状、モノづくりの現場をテレワークに切り替える術はありません。
また、営業においても、工事現場の打合せなど、要所要所では対面の必要性がありますので、生産性の落ちるテレワークの導入は困難です。
更には、テレワークが孤独感からストレスになり、メンタルヘルスに発展してしまっては本末転倒です。
それらを考慮するとコロナ禍が明けてから、正式のテレワークを導入するには、職種や人材を限定することになろうかと考えます。
但し、福利厚生的な意味合いで、期間限定などで、育児や介護などに対応しながら就業するためのサポート制度としては残せるかと思います。
もちろん、今後のインターネット技術の発展など環境が、どう変わるか分かりません。
その辺は、それらの環境変化に柔軟に対応できるようにして行きたいと思います。