戦略人事「ワーク・ライフ・バランス」
- 2019.03.23
|戦略人事
企業は、その目的を果たすために、経営理念に基づいた戦略を立案し、それに沿って事業活動をマネジメントします。
そして、それらの活動には、資金調達、販売、人材管理、経営管理などの諸々の力の集合体である経営資源が不可欠となります。
経営資源とは、一般的にヒト、モノ、カネ、情報といわれています。
この経営資源を必要な部署や取り組みに供給するのも、インフラストラクチュアの取り組みとなります。
なかでも、筆頭の「ヒト」、つまり人事の重要性が高まっています。
従来型の人事とは、労務・法務などの制度やマニュアルなどのオペレーション業務ばかりに固執した保守的、定型的な前例主義がほとんどでした。
反面、従来の経営戦略では、戦略的に人事を捉える意識が低かったといえます。
故に、今後は、人材と組織の側面から変革をリードしていく戦略的人的資源管理(以下、戦略人事)が重要視されています。
現在、政府主導で働く人たちの視点に立って労働制度の抜本改革を行うと共に各企業も労働条件、場合によっては、文化や風土までも変えて行こうとする「働き方改革」が推進されています。
労働生産性を改善し、その成果が労働者に分配されることで、需要の拡大を図り「成長と分配の好循環」を構築を目指すものであり、戦略人事としても価値ある取り組みであると捉えています。
|ワーク・ライフ・バランス
「働き方改革」の中で、新しい働き方のスタイルとして、「ライフワーク」という言葉もよく耳にします。
ワーク(仕事)とは、人の暮らし、ライフ(人生)を経済的に支える存在です。
対して、「ライフワーク(lifework)」とは、仕事を経済的な存在だけで捉えていません。
人が人生を捧げた生涯の仕事であったり、生きがいを感じる仕事、仕事を通じての喜びであり、天職などとも捉えられるようです。
しかし、一概に「ライフワーク」を美化し過ぎて捉えては、一つ間違えると、仕事以外の生活に支障を来す問題も抱えていることも理解しなければなりません。
仕事と同時に、家事、育児、近隣との付き合いなども暮らしに欠かすことができないものであり、その充実があってこそ、人生本来の生きがい、喜びは倍増するはずです。
また、そもそも安定した仕事に就けずに経済的に自立することができない方、仕事に追われ心身の疲労からメンタルヘルスを患ってしまいかねない方、仕事と子育てや老親などの介護との両立に悩む方など、現実は、仕事とライフワークにギャップがある方々も少なくないという問題もクローズアップされています。
ワーク(仕事)とは、ライフ(人生)の一部として成り立つものであって、なおかつ、その存在で人生を支える存在でもあるのだと思います。
それを考えたら、ワーク(仕事)とライフ(人生)の調和といえる「ワーク・ライフ・バランス」が重要視されます。
内閣府の掲げる「憲章」では、「ワーク・ライフ・バランス」について次の様に表現されています。
具体的には
1.就労による経済的自立が可能な社会
経済的自立を必要とする者、とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。
2.健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。
3.多様な働き方・生き方が選択できる社会
性や年齢などにかかわらず、サクセスフル・エイジングなど、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。
|働きがい改革
偏った捉え方になってしまう可能性がありますので、以降は、一つの考え方とお考えください。
労働生産性を改善し、その成果が労働者に分配されることで、需要の拡大を図り「成長と分配の好循環」を構築させようとする「働き方改革」ですが、どこか人材不足を背景とした人材確保策である「働きやすさ改革」に終始してしまっている傾向にあると感じています。
それは、過去にあった「ゆとり教育」の際の子どもたちへの対応に似ているように感じられます。
結果、日本の国際的な競争力の低下に繋がらないものかを危惧しております。
もちろん、従業員にとって働きやすい職場環境の整備は非常に重要な問題ですので対処して行かねばなりません。
しかし、同時に、従業員に対して、ライフワークとなり得る仕事や職場を提供してあげられるような「働きがい改革」を推進して行かねばならないと考えます。
その上で、仕事ばかりに偏るのではなく、ワーク・ライフ・バランスも考えなければならないと思っています。
例えば、公明正大、信賞必罰な評価制度としてコンピテンシー評価や表彰制度を組織内で機能するように推進しなければならないと捉えております。
また、これらの取り組みは、環境が変化する以上、完了することはなく、常に改革、改善を継続して行かねばならない重要事項であるとも思います。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長