マネジメント「TOC(制約理論)」
- 2012.12.23
|マネジメント
マネジメントとは、企業が、その目標を達成するために必要不可欠なものであり、組織の三要素などの異なる形のたくさんのピースをハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものなのかと考えます。
また、それらは、必ずしも、プラス的な要素とは限りません。
例えば、マイナス的な制約ならば、「物理的制約」、「方針制約」、「市場制約」が考えられます。
■ 物理制約
生産現場なら生産能力が需要を満足させることができない能力の低い工程や設備などが存在している状態
■ 方針制約
経営方針や組織構造、規程、制度、評価基準、ルールや慣例などマネジメント上の問題で正しい行動ができない状態
■ 市場制約
市況の低迷あるいは、提案力(営業・製品・価格・物流など)の低下が要因で、販売が伸びない状態
よって、マネジメントにおいては、それぞれの制約を常に顕在化させて改善に努めるとが大切です。
その上で、成約も要素も複雑に絡み合ってくるものであり、それらを複合的に捉えて対処することが重要となります。
|TOC(制約理論:Theory of Constraints)
「TOC(制約理論:Theory of Constraints)」とは、サプライチェーン・マネジメントの理論の一つとして用いられるもので、1970年代前半、エリヤフ・M・ゴールドラット博士によって提唱されました。
サプライチェーン・マネジメント(SCM:Supply Chain Management)とは、供給業者から最終消費者までの業界の流れを統合的に見直し、プロセス全体の効率化と最適化を実現するための経営管理手法です。
この理論を世に広めた小説「The Goal(ザ・ゴール)」は21カ国語に翻訳され、全世界で400万部近を超える大ベストセラーとなっています。
この「The Goal(ザ・ゴール)」では、ある工場を舞台とした物理的制約がクローズアップされています。
企業の財務上の成果を示すアカウンティングの観点から、組織を「プロフィットセンター」と「コストセンター」に区分する考え方があります。
「プロフィット・センター」とは、売上と経費が集計される部門であり、売上から経費を差し引いた利益を高める(プロフィットアップ)ことが課題となります。
対して「コストセンター」は、経費のみが集約される部門となります。
「The Goal(ザ・ゴール)」の中では、コストセンターであった工場が、指数である「スループット」、「在庫」、「業務費用」を管理しながらTOCを推進することで、プロフィットセンター化して行く姿が描かれています。
(1) スループット・・・工場が生産したものの売上額や利益額
(2) 在庫・・・材料在庫額、仕掛在庫額、製品在庫額
(3) 業務費用・・・かかった経費額のすべて
これらは、決して単独で捉えるものではなく、それぞれが影響し合っています。
例えば、スループットが増えても、在庫や業務費用が同じように増えては意味がありません。
また、在庫や業務費用を削減しても、スループットも落ちてしまったら意味がないのです。
製造部門のマネジメントとしては、如何にして、在庫と業務経費の発生を抑えて、スループットを高めるかが重要となります。
|ボトルネック
TOCでは、生産工程を1本の鎖のようなものに例えています。
そして、この場合に重要なのは、その強度であり、それを決めるのは、一つ一つの輪の強度となります。
例えば、10個の輪で構成された鎖があったとします。
その際、9個の輪の強度が高かろうが、残された1個の輪の強度が弱ければ、1本としての鎖は、弱い輪の強度に「制約」されてしまうということです。
「制約(Constraints)」とは、「あるシステムが、ゴール達成のため、より高い機能へレベルアップするのを妨げる因子」と定義されています。(APICS:アメリカ生産管理在庫管理学会Dictionary,1998年)
製造の現場で考えた場合、処理能力が与えられた仕事と同じか、それ以下の工程を「制約」として「ボトルネック(bottleneck)」と呼ばれたりします。
反対に与えられた仕事量より処理能力が大きい工程を「非ボトルネック」と言います。
また、「ボトルネック」を制約工程(CCR:Capacity Constrained Resource)と表現したりもします。
「ボトルネック」は、必ずしも悪ではなく、単なる「事象」と捉えるべきです。
何故なら、TOCを推進することで、常に「ボトルネック」が変動する可能性があるからです。
TOCを推進する上での「5つの集中ステップ」です。
ステップ1 「ボトルネック」を特定する
↓
ステップ2 「ボトルネック」の処理能力を、最大化させるための活用策を決定する
↓
ステップ3 「ボトルネック」以外の工程のすべてをステップ2の決定に従わせる
↓
ステップ4 「ボトルネック」の処理能力を高める
↓
ステップ5 ここまでのステップで「ボトルネック」が解消したらステップ1に戻る
この「5つの集中ステップ」を繰り返すことで、惰性に陥らず、常に新しい「ボトルネック」、つまり、「ゴール達成のため、より高い機能へレベルアップするのを妨げる因子」を発見して解消させることが可能となります。
結果、強度の保たれた1本の鎖であるサプライチェーンが確立されます。
そのためにも、ベンカンにおいても、TOC(制約理論)を取り入れた指数で管理し、ボトルネックの特定とカイゼン活動を継続的に繰り返すことで、企業価値の向上に努めて参ります。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長