戦略人事「ジョブ型雇用」
- 2012.12.11
|戦略人事
高度経済成長期そして、20世紀の近代的工業化と著しく発展した日本経済を支えたのは企業でした。
そして、その企業を支えたのは紛れもなく、そこで働く人たちです。
当時は、経済は常に右肩上がりに成長していくものだと信じられ、また、現実にそうなっていた時代でもありました。
結果的に、当時の人事制度の目的は、年功序列や終身雇用に代表される安定的な共同体としての労使関係の維持であったと言えます。
しかし、現代は、良いモノを作れば売れるとも限らない、多様性、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性などのキーワードが飛び交う「先行きの不透明な」時代への変遷しております。
更には、今後の日本企業は、外資の流入によるグローバル化が進むことで、より収益性を求められる欧米化に対応した経営が必要となってきます。
また、人事面からすると、人材不足も深刻な問題となってきます。
経営を下支えするのが経営資源であり、その筆頭が、昔も今も、やはり、人材です。
故に、今後は、より戦略的人的資源管理(戦略人事)が重要視されます。
|ジョブ型雇用
日本企業の共同体経営から定着した雇用形態を「メンバーシップ型雇用」といって、新卒一括採用型の雇用システムです。
その多くが総合職として雇用され、部署の異動によって、ジョブローテーションを繰り返させながら、長期的に人材育成して行くのが基本となります。
そのため年齢、勤続年数、学歴などが評価のベースとなっています。
人材の能力を見極めて、適した職務を与える「適材適所」的な考え方となります。
対して、欧米を中心に日本以外の諸国で採用されるのが「ジョブ型雇用」です。
組織には、必ず、組織たる目的があります。
そして、その目的を果たすために組織体系があり、固有の職務(ジョブ)が存在します。
まずは職務ありきであって、そこに合ったスキルを持った人材を配置する「適所適材」的な考え方です。
具体的には、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」に基づき、あらかじめ目標や報酬などの条件を明確にした上で雇用契約を行う「成果評価」となります。
目標に対する達成レベルを評価の対象とするため、「年功評価」の様な年齢や勤続年数などは評価軸から除外される評価方法です。
従来の「メンバーシップ雇用」では、発揮した成果に無関係の年齢、勤続年数、学歴も評価の一部でした。
あるいは、成果というより経験値などによる成長度を評価する傾向もありました。
しかし、それらの能力などが、事業発展に貢献しているかと言えば、必ずしもリンクしているものではない曖昧なものでした。
一方、「ジョブ型雇用」では、当初より評価の基準となる「ジョブディスクリプション(職務記述書)」が存在します。
評価は、この「ジョブディスクリプション(職務記述書)」と客観的に擦り合わせて行われることになります。
ベンカンも「ジョブ型雇用」の導入を管理職に限定して開始しております。
しかしながら、欧米型というよりは、現状は、「メンバーシップ型雇用」との折衷型といえるかと思います。
特に「成果評価」は、場合によって、成果至上主義に偏ることもあり、必ずしも、経営目標とつながらないケースもあります。
そこで、「成果評価」に加えて「コンピテンシー評価」を取り入れています。
|コンピテンシー評価
組織には、[ 262の法則 ] が存在すると言われます。
[ 262の法則 ] とは、組織を構成する人材が、その特性によって、 [ 20% 対 60% 対 20% ] に分かれる傾向にあることです。
また、それを [ ジンザイ ] になぞらえて表現されたりもしています。
つまり、能動的に行動する20%が [ 人財 ] です。
そして、まだまだ、能動的ではないまでも指導を受けることで行動できる60%が [ 人材 ] です。
さらに、残念なことに、過去の自分に囚われるあまり、現状を現状のまま維持しようとして無意識に行動を拒んでしまう20%が[人在]です。
これが「メンバーシップ型雇用」で形成された組織であれば、顕著に表れると考えられます。
そのためにも社員の自律を促す人事評価制度は絶対に必要になってきます。
「コンピテンシー(competency)」とは、「組織の置かれた環境と職務上の要請を埋め合わせる行動に結びつく個人特性としてのキャパシティ、あるいは、強く要請された結果をもたらすものである」とか、「職務や役割における効果的ないしは優れた行動に結果的に結びつく個人特性である」と定義づけられています。
さらに一般的に分かりやすく表現するのであれば、「高い業績に結び付く行動や思考の特性」のことを意味します。
その意味でも「コンピテンシー評価」は、「ジョブ型雇用」を導入している管理職だけではなく、全社員に実施しています。
職種別に高い業績を上げている[ 人財 ]の行動特性を分析し、その行動特性をモデル化した基準として、人事評価することで包括的な組織の発揮能力を向上させることが目的となります。
「コンピテンシー評価」の基準は、経営として「求められる人材像」ともいえます。
しかしながら、架空の「求められる人材像」と比較するのではなく、実在する人材を基準に実在する人材を評価します。
何度も、基準とする人材を変えて、相対評価あるいは衆目評価を繰り返します。
そのため査定者の恣意的な評価も撲滅できる公明正大な人事評価も可能となります。
また、意欲的に行動する人も、そうでない人も、不公平に平等な評価される様な従来型の人事制度から、意欲的に行動し、成果に結び付けた人が高く評価され、そうでない人は低く評価される信賞必罰な人事制度も可能となります。
結果的に評価と経営への貢献度がリンクし易くなると考えております。
社内教育に関しても、会社に一方的に与えられるものではなく、社員が必要なスキルを自ら選択して身に着けることができるキャリアアップ勉強会の開催や教材書籍の貸与なども推進しています。
まだまだ試行錯誤段階ではありますが、将来的には、全社員に対してベンカン独自の「ジョブ型雇用」を実施することを目標としております。
そして、この人事制度という仕組みを通じて、現在および将来に向けての企業戦略に必要不可欠な人材像をより具体化させた形で社員に対して提示します。
ここの職務と成果を明確化させることで、社員の仕事に対する取組み意識は変わって来るものと考えております。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長