マネジメント「ドラム・バッファー・ロープ」
- 2012.12.19
|マネジメント
限られた資源で、より大きな成果を出すための機能がマネジメントといえます。
企業であれば、ヒト、モノ、カネ、情報といわれる経営資源を活用して事業目標を達成させるのかです。
しかしながら経営資源が、必ずしも事業目標を達成させるために最適な状態にあるとは限りません。
例えば、ヒトであれば、限られた人材や人員ということになります。
まず、大切なのが、全ての社員が同じ目標を達成させるための貢献意志を持っていることです。
ここは、目標を達成させる上での前提となります。
目標を統一ができることで、課題が可視化されるからです。
しかしながら、目標を統一させても、それを達成させるための方法論は、人それぞれです。
また、それぞれの能力も均一ではありませんし、それぞれに、長所もあれば、欠点もあります。
それ故に、それぞれの長所を活かし、それぞれの欠点を補い合いながら、目標達成に向けて取り組む必要があります。
それは、まるで、異なる形のたくさんのピースをハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものです。
|ドラム・バッファー・ロープ
限られた経営資源を有効に活用する手法に「ドラム・バッファー・ロープ」があります。
これは、書籍「ザ・ゴール」の「TOC(Theory of Constraints:制約理論)」の中で登場します。
そもそも、TOCとは、生産を通じて、バリューチェーン(Value Chain)を最適化させて、スループット(売上高)を増やしながら、同時に在庫と業務費用を減らすこと・・・つまり、利益を増やすための理論です。
「ドラム・バッファー・ロープ(drum・buffer・rope)」は、製造工程を、進む速度の違う人を縦一列に並べて進む隊列の様子に例えた考え方です。
この場合、後ろの人の進む速度は、前の人を追い抜かさない限り、前の人の進む速度に依存します。
例えば、歩くのが遅い人の後続は、仮に歩くのが早い人であっても、早く歩くことはできません。(依存的事象)
また、本来、歩くのが早い人であっても、天候や道路の状態など何らかの状況変化により、一定速度で歩けるとは限りません。(統計的変動)
結果、どうなるのかと言うと、この隊列は、目的地までの到着(スループット)が遅れたり、先頭から最後尾まで長さ(在庫)が長くなってしまったり、予想外の労力(業務経費)を要したりする可能性があるわけです。
「ドラム」とは、音楽で使う「ドラム」です。
速度を依存する、もっとも歩くのが遅い人(ボトルネック)に合わせて「ドラム」を鳴らし、全体の同期を取ることを意味します。
さらに、隊列の先頭から最後尾の人まで、一定の長さの「ロープ」を持って進むことで、隊列の長さが広がることを防ぐことを意味します。
隊列の人たちを互いに「ロープ」でつないで、「ドラム」の音に合わせることで、依存しなければならない歩くのが遅い人の速度に合わせ効率よく進ませる考え方です。
また、予測できない速度の変化に対応するために、「ロープ」を少し長くして、最も歩くのが遅い人が前を歩く人にぶつからないようにすることを「バッファ」としています。
これにより、最も歩くのが遅い人の速度を、他の人が原因で、遅れさせることを防ぐことができます。
|現場での取り組み
「ドラム・バッファー・ロープ」を現場に置き換えてみます。
まず、重要なのは、全体の生産能力(スループット)を左右する「ボトルネック」を特定することです。
その上で、「ボトルネック」を徹底活用し処理能力を全開させるかが重要となります。
次に「ボトルネック」の処理能力以上に合わせた資材や仕掛の投入調整です。
「ボトルネック」の処理能力以上の資材や仕掛を投入したら余剰在庫となってしまいます。
かと言って、バッファ(余裕)を持たせておかないと仮に、「ボトルネック」の前工程でトラブルがあった場合に、「ボトルネック」の処理能力に悪影響を及ぼしてしまいます。
これらを加味した適正な投入調整が必要です。
また、「ボトルネック」の後工程の処理能力を高め過ぎても、結局は「ボトルネック」は、その処理能力に追いつくことができません。
結果、後工程では、仕掛不足となり、生産が止まり、無駄な業務費用などが発生してしまいます。
そこで、「ボトルネック」の後工程では、「ボトルネック」の処理能力に合わせた処理能力に調整することが必要となります。
「ドラム・バッファー・ロープ」とは、TOCを推進する上で、「ボトルネック」の能力を最大化して、それを停めないことで生産工程のムダをなくすための有効な手法であると言えます。
ポイントとなるのが、処理能力が与えられた仕事と同じか、それ以下のであることから、全体の生産能力(スループット)に悪影響を及ぼす工程です。
一般的に、「ボトルネック」と呼ばれる工程ですが、悪の様に扱われますが、ここでは、単なる「事象」であると捉えます。
故に撲滅させると言うよりは、処理能力を高める取り組みを行います。
また、「ボトルネック」ではなく、制約工程(CCR:Capacity Constrained Resource)と表現したりもします。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 取締役 最高執行責任者(COO) 兼 執行本部 本部長