マネジメント「バリューチェーン」
- 2012.12.01
|マネジメント
企業には、特有の目的を果たすことによって、社会において存在することの意義が求められます。
そのために、ヒト、モノ、カネ、情報などの様々な経営資源を活用することとなります。
しかしながら、それらの資源には、多能な要素があります。
例えば、人材であれば、それぞれの能力も均一ではありませんし、それぞれに、長所もあれば、欠点もあります。
それ故に、組織の存在意義を高めるためにも、マネジメントを機能させ、それぞれの長所を活かし、それぞれの欠点を補い合いながら、より大きな目標を達成させることが大切です。
組織である企業が、成長するための活動には多くの資本や労働力が必要であり、そして更なる成長には、より多くの経営能力が必要となります。
そのために欠かせないものとして、エディス・ペンローズが提唱したものに経営資源があります。
経営資源とは、「ヒト」、「モノ」、「カネ」と例えられるように戦略人事、資産管理、資金調達、情報活用などの諸々の力の集合体です。
その良質な経営資源をどれだけ確保できるかは、企業の競争力を決定づけるとも言われています。
また、企業にとってのマネジメントでは、それらの経営資源を如何に活用してバリュープロポジションともいえる価値を生み出せるかにかかっています。
まるで、異なる形のたくさんのピースをハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものです。
|製造業のビジネスモデル
製造業にとって欠かせない経営資源が、工場です。
ところが、ファブレス(fabless)のビジネスモデルをされるメーカーがあります。
ファブ(fabrication facility)とは、工場のことを意味しますので、製造業でありながら工場を持たない企業のことです。
具体的な事例は、製品の企画、開発、設計は自社で行うものの、製造に関しては、社外に委託して行い、自社ブランドとして販売するビジネスモデルです。
また、製造の社外委託に関しては、100%委託する企業もあれば、一部を社内に残される企業もある様です。
そもそも、ファブレスには、社外委託を何%以上するなどの定義や基準がありませんので、この辺は曖昧なところでもあります。
例えば、誰もが認めるグローバルトップのメーカーですら、100%社内製造ではありません。
決して、ファブレスの善し悪しを論じるつもりはありません。
大切なのは、バリューチェーンの最適化と向上に適したビジネスモデルであるのかということなのだと考えます。
|バリューチェーン
バリューチェーンとは、企業の総体的価値を創造し、最大化させるための一連の仕組みです。
そのため、事業活動を構成する個々の価値(Value)を連鎖(Chain)させることで、企業の総体的価値にどのように貢献させるかを体系的かつ総合的に検討しなければなりません。
1985年に経営学者のマイケル・E・ポーター氏が自身の著作「競争優位の戦略」の中で提唱した概念です。
バリューチェーンでは、「事業とは顧客にとっての価値を創造する活動である」ことを原理原則としています。
その原理原則を基に、組織の全体最適をフレームワークを活用して分析し、最適化と、より競争優位をもたらすための戦略を導き出します。
バリューチェーンのフレームワークでは、価値を創造する事業活動を「主活動」と「支援活動」に分けて構成されています。
詳細は、製造業や商社、IT系企業などによって異なりますが、製造業の事例としてご紹介します。
まず、「主活動」とは、製品・サービスが顧客に到達するまでの、材料や部品の「購買・調達」→「製造」→「発送」→「販売・マーケティング」→「サービス」などとなります。
一方の「支援活動」とは、個々の「主活動」、場合によっては他の支援活動に関連する全体を支援する活動であり、「管理(インフラストラクチュア)」、「生産管理」、「開発技術」、「品質保証」などとなります。
そして、それらの活動から生み出される「利益」とは、創造された価値であり、総価値と、価値活動の総コストの差であるとされております。
|バリューチェーンに求められること
バリューチェーンを実態と合わせて行くと、まず、戦略は、主活動で構成する必要があります。
製造業の場合の主活動は、当然のことながら製造部門となります。
また、バリューチェーンの原理原則が「事業とは顧客にとっての価値を創造する活動である」以上、その始まりは、顧客や市場構造を理解するための営業部門となります。
つまり、事業戦略の主軸は、製造部門と営業部門の両輪です。
例えば、製品開発を主軸の戦略に加えてしまうと、プロダクトアウトの製品が生まれ、原理原則から逸脱してしまう可能性があります。
故に製品開発は、他の支援活動と同様に主軸戦略を支える位置づけとしたいと思います。
また、このフレームワークで、組織の価値を創造する活動全体を考えると、縦割り組織などで生じやすいセクショナリズムが如何に付加価値追求の無駄になる可能性があるかが見えてきます。
特に事象だけで部門を分けて表現する言葉に、プロフィットセンターとコストセンターがあります。
プロフィット・センター(profit center)とは、収益と費用(コスト)が集計される営業部門を指し、費用(コスト)だけが集計され、収益は集計されない他の部門をコストセンター(cost center)と称します。
この切り口で考えた場合、コストセンターにとっての改善はコストダウンしかありません。
しかし、現実的には、コストダウンそのものは、顧客にとって価値ある提案にはなりません。
このコストセンターを如何にして、プロフィットセンター化するかが重要視されると捉えております。
今後、製造戦略と営業戦略を主軸とし、プロフィットセンター組織化に努め、バリューチェーンの創造と最大化のマネジメントに努めてまいります。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長