組織「ジンザイ」
- 2017.08.12
|組織とは
企業は、その目的を果たすために、経営理念に基づいた戦略を立案し、それに沿って事業活動を推進します。
そして、それらの活動には、資金調達、販売、人材管理、経営管理などの諸々の力の集合体である経営資源が不可欠となります。
経営資源を提唱したエディス・ペンローズによれば、企業の成長に限界が来るのは物理的な制約からではなく、相対的に経営資源が不足するからと示しています。
その経営資源ですが、一般的には、「ヒト」「モノ」「カネ」といった有形資産と「情報」といった無形資産の総称となります。
経営戦略では、多くの良質な経営資源を確保することが重要です。
また、確保ばかりしても活用しなければ宝の持ち腐れです。
故にマネジメントでは、それらの経営資源を如何に活用してバリュープロポジションともいえる顧客ニーズに応えた他社にはできない差別化価値を生み出すことが重要視されます。
それは、まるで、異なる形のたくさんのピース(要素)をハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものです。
それ故に、企業には、経営資源の筆頭である「ヒト」に関する取り組みの重要性は増しており、戦略的人的資源管理(戦略人事)が求められています。
|262の法則
自身を「褒められないと伸びないタイプ」と自己分析し、暗に褒められることを要求してしまう人がいます。
確かにピグマリオン効果という考えがあります。
ピグマリオン効果とは、より期待されることで成果が高まるという現象です。
組織には、[ 262の法則 ] が存在すると言われております。
[ 262の法則 ] とは、組織を構成する人材が、その特性によって、 [ 20% 対 60% 対 20% ] に分かれる傾向にあることです。
それを、[ ジンザイ ]に例えて表現した考え方があります。
能動的に行動し、事業に貢献できる優れた20%が [ 人財 ]です。
実際、パレートの法則では、組織の8割の成果は、20%の [ 人財 ] によるものであるともいわれるように、組織の財産的な存在です。
そして、まだまだ、能動的ではないまでも指導を受けることで行動し、事業に貢献できる60%が [ 人材 ] です。
つまり、組織にとって、一般的な存在です。
対して、事業に貢献できない20%が[ 人在 ]です。
この[ 人在 ]には、大きく二通りがあると考えられます。
まず、経験値が浅いために貢献できないケースと何らかの理由から行動することを拒んでいるケースです。
先述の「褒められないと伸びないタイプ」は、[ 人材 ] にあたるかと思います。
ある意味、能力があるのに自分で行動に結び着けることができない、「惜しい人材」とも捉えられます。
|人材を動かす方法
組織における20%の[ 人財 ]ですが、元来は、組織全体の5%-10%の存在なのだそうです。
つまり、現在の[ 人財 ]もかつては、[ 人材 ]、あるいは[ 人在 ]であった可能性もあるということです。
組織ですが、[ 人財 ]の20%にばかり依存し続けていては、なかなか成長することができません。
ならば、組織の60%をも占める惜しい[ 人材 ] に、現状と目指すべき [ 人財 ] を如何に意識させるかだと考えます。
この惜しい[ 人材 ]の特性を人材育成コンサルタントである 大塚 寿 氏の表現を活用させていただき、次のように定義づけております。
・やるべきことはわかるのに 常に受け身
・意見は持っているのに 声がだせない
・頑張っているつもりなのに 成果がでない
・スキルがあるのに 発揮しようとしない(発揮できない)
・いい人なのに 肝心なところで 頼りにされない
・チャンスがあるのに チャレンジしない
注意すべきは、組織を構成する[ ジンザイ ]の全てが、異なる特性を持った一人一人であるということに思います。
ピグマリオン効果からも、期待することで育成する方法もあります。
しかし、仕事は期待されることばかりではありません。
また、期待を表に出され過ぎて、そのプレッシャーで潰れてしまう人だっています。
結局、その人に期待する上で、その人の状態や環境によって、褒めたり、叱ったりをバランスよく発動させることが大切なのだと思います。
但し、バランスとは決して、中庸とは違うことも意識せねばなりません。
※中庸(ちゅうよう):極端な行動をせずに穏当に振る舞うことです。
|将来に向けた課題
実は、[ ジンザイ ] には、[ 人財 ]、[ 人材 ]、[ 人在 ]にも属しない存在もあるといわれています。
それは、成長しようとしている人達の意欲を奪ってしまう [ 人罪 ] と呼ばれる存在です。
[ 人罪 ] は、ドリームキラーとも呼ばれ、他人の夢をも奪ってしまいます。
[ 人在 ] は、何れ、[ 人材 ]となり、[ 人財 ]となる可能性を秘めています。
しかし、「百害あって一利なし」の存在である[ 人罪 ]に対しては、容認することなく抜本的な対策が必要になってくるかと思います。
また、国内全体で労働力不足が問題視される昨今では、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれるように、AI(Artificial Intelligence:人工知能)などのロボット化やIoT(Internet of Things)などのICT(情報伝達技術:Information and Communication Technology)の普及が加速化すると考えられます。
そうなると[ ジンザイ ]に対しては、定型的な仕事(マックジョブ)ではなく、より、創造性の高い仕事(クリエイティブジョブ)が求められて行きます。
組織とは同じ理念を持った[ ジンザイ ]の集合体です。
しかし、何も行動しなければ、単なる烏合の衆に過ぎません。
一人一人が同じ価値観を持ち、統率された基軸戦略に基づき、それぞれの考え方で落とし込んだ行動を実現するためにマネジメントが重要視されます。
また、理念を理解しながらも、それぞれの持った特性を活かしたクリエイティブな発想と行動が成長に欠かせないのだと考えます。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長