経営「ニーズの変化」
- 2012.12.31
|経営環境
高度経済成長期には、モノ不足からもたされる「作れば売れる」時代が続きました。
そして、国際的にも日本の製造業の高い技術力が評価され「良いモノを作れば売れる」時代に遷ります。
しかしながら、技術力だけに頼ったビジネスモデルでは、既に限界を迎えていることは明らかとなってきました。
現在の経営環境を、1990年頃から使われた軍事用語であるVUCA時代と表現されるケースがあります。
VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)を意味します。
この様な経営環境において、いつまでも「良いモノを作れば売れる」様な神話的な思考に依存していては、この限界から脱却はできません。
如何にして環境の変化を逸早く察知して、最良の経営戦略を講じて行けるかが重要となって来ます。
|ニーズの変化
ベンカンは、1947年に東京都大田区で溶接式管継手のメーカーとして創業いたしました。
溶接式管継手の事業は、現在は、グループ会社であるベンカン機工が継承しております。
対して、現在のベンカンの事業であるステンレス配管対応のメカニカルジョイントは、新規事業として、1975年に大田区大森に工場を建てて、製造・販売を開始しています。
つまり、ベンカンにとって、大森は原点の地なのです。
その大森といえば、海苔が有名でした。
この沿岸部では、江戸時代から海苔づくりが盛んに行われていました。
この辺で採れた海苔は全国一の生産量を誇りました。
海苔づくりの方法がここから全国各地に伝えてられたので、大森は「海苔のふるさと」とも呼ばれています。
しかし、高度成長期の工業用地の拡大による東京湾の埋め立てなどのため、海苔生産者は昭和37年(1962年)に漁業権を放棄し、翌年春に最後の収穫を終えました。
現在は、その歴史を伝えるための施設として「大森 海苔のふるさと館」があります。
また、隣接する「大森ふるさと浜辺の公園」の浜辺では、冬の間に海苔を育てるための「海苔網」と「竹ヒビ」が設置され、実際に海苔を育てています。
かつて、大森で盛んだった海苔づくりの様子を紹介し、昔の技術を後世に伝え続けるためなのだそうです。
環境の変化から途絶えてしまった原点を見るのは忍びない思いでもあります。
|変化へのチャレンジ
環境の変化によって、ニーズも変化します。
大森の地の場合は、海苔づくりから、モノづくりへと変化しました。
捉え方によっては、寂しい思いですが、新しいニーズであるモノづくりに対応して発展していると捉える見方もあります。
そして、ベンカンも創業は大森であり、その一翼であったと自負しております。
ベンカンですが、溶接式管継手事業から派生して、ステンレス配管対応のメカニカルジョイント事業で現在に至っております。
しかし、このニーズもまた、未来永劫、続くものとは限りません。
ベンカンのビジョンは、社会における存在意義を高め〝サステナブル企業〟を目指すことです。
このビジョンは決して変化させてならないものだと捉えております。
その上で、このビジョンの実現のためにミッションを掲げています。
現在だけでなく未来を考えた 配管の開発と供給を通して 信頼あるライフラインの構築をご提案します
しかし、この中で、ステンレス配管とは謳っておりません。
それは、現在、このミッションに沿った製品が、ステンレス配管と位置付けているものの、将来に渡ってステンレス配管であり続けるとは考えていないからです。
実際、現在は、冷媒対応のアルミ配管や銅配管などの開発にも取り組んでおります。
ベンカンのスローガンです。
知恵と勇気を持って変化にチャレンジしよう!
私たちは、おかれた環境の変化を意識して、それに立ち向かうために自らも変化します。
そのために、今後も現状に満足することなく、新しい素材、新しいシステム、新しい技術に、果敢にチャレンジして行きたいと思います。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長