経営「ロコモ企業からの脱出」
- 2012.01.01
|ロコモティブシンドローム(運動器症候群)
日本は、世界に先駆けて高齢化社会を迎えています。
これは少子化による影響と平均寿命の高まりが大きな要因です。
厚生労働省が公表している「平成28年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳に達しています。
この平均寿命の高まりは、50歳を境に、従来では考えられなかった運動器の機能障害をもたらしています。
つまり、従来の運動器機能障害対策の単なる延長ではなく、加齢や高齢による影響を考慮した新しい対策が必要と言うことになります。
具体的には、「片足で立って靴下が履けない」、「階段を上るのに手すりが必要である」、「15分くらい続けて歩けない」、「横断歩道を青信号で渡りきれない」、「何でもない場所で、つまずいたりする」などの様な運動器の障害による移動機能の低下です。
頭ではわかっていても、脳から発信される信号どおりに体が正しく動いてくれない、そんな状態となります。
この状態を運動器症候群として、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と呼ぶことを、2007年に日本整形外科学会が提唱しました。
この「ロコモティブシンドローム」が厄介なのが、生活する上で大きな障害とも言えるレベルにないことから本人に自覚がないと言うことなのだそうです。
しかし、それを改善しようとせずに放置してしまうと、将来、寝たきりになってしまう可能性もあるのだと言います。
|ロコモ企業の存在
そもそも、私がこの「ロコモ」について知ったのは医療関係ではなく、仕事による情報からです。
その警鐘は、頭ではわかっていても、脳から発信される信号どおりに体が正しく動いてくれないロコモ企業(組織)が存在すると言うものでした。
理想の組織であれば、経営理念や方針に従って組織全体が統率の取れた活動します。
それが仮に理想ではないにしても、正しい組織であれば、そこから大きく外れることなく活動できるものと考えます。
逆に大きく外れる様であれば、法を犯して罰せられたり、ブラック企業と指摘される筈です。
ところが、ロコモ企業の場合は、脳から発信される信号どおりに体が正しく動いていないことに、頭が理解していない、自覚していないのです。
結果、経営理念や方針が正しくても、成果が出ない現状を問題であると自覚しないまま、流してしまったり、肝心の問題原因ではない箇所に手を加えてしまう可能性が出てしまいます。
そうなると組織は迷走し、最悪な状態に陥ってしまうことになってしまうかもしれません。
|誤ったエンパワーメント
現在の組織を統括した初期の経営スタイルは、トップダウンの強いものでした。
それは、なによりも結果スピードを優先するために、経営理念は方針は当然ながら戦略、場合によっては戦術レベルまでをトップダウンで進めてきました。
結果とは、良い結果もあれば、悪い結果もあります。
しかし、その結果が早く出ることで、仮に悪い結果であっても、時間的、経済的、機会的にも痛手を最小限に抑えることができ、次のPDCAサイクルで良い結果につなげることも可能でした。
ところが、その組織が、あたかも成熟したかのように捉え、エンパワーメントを実践してしまったのです。
エンパワーメントが悪いのではありません。
エンパワーメントの手法が悪かったのです。
経営理念や方針までは共有できていたのかもしれません。
しかし、戦略レベルとなれば、エンパワーメントが成立していないために、そこがミスコミュニケーションのボトルネックとなり、組織が「正しく」動かなくなることが増えました。
結果、人間の身体であれば、思った以上に足が上がらなかったり、踏ん張れなかったり、判断が遅くてつまづいて転んだり、ストレス耐性が低くて階段を上り切る力がなくなってしまった訳です。
正に、人間のロコモと同じ、ロコモ企業の状態でした。
しかし、私は、それになかなか気づきませんでした。
それは、私がエンパワーメントした相手が、私の考えや戦略について建設的な意見、評価をできる存在になかったからだと思います。
結果、私は、下からのフィードバックを得ることもなく、独り善がりになったり、エンパワーメントと言う正論をかざして丸投げしてしまっていたのだと思います。
正に、「裸の王様」でした。
|正しいエンパワーメント
「エンパワーメント(権限委譲)」とは、権限を一方的に与えるものではありません。
例えば、エンパワーメントに至るまでの流れを、「ティーチング」→「コーチング」→「エンパワーメント」であると捉えてはならないのだと思います。
正しくは、「ティーチング」→「ティーチング+コーチング」→「ティーチング+コーチング+エンパワーメント」なのだと思います。
つまり、知識を伝え、そして、それぞれに寄り添った「双方向なコミュニケーション」を徹底することで問題を自覚できる「エンパワーメント」の推進が大切なのだと考えます。
これまでのエンパワーメントは、私個人のオペレーションミスでした。
先般の本社の朝礼においても、その旨を従業員に伝えました。
ここは、この結果を元に、私自身が、私自身の責任で成功するまでPDCAサイクルを回さなければならないと、あらためて決意しました。
2019年1月1日発行
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長