ワーク・ライフ・バランス「サクセスフル・エイジング」
- 2012.12.05
|戦略人事
日本の「労働力人口」は、今後も大幅な減少傾向にあると見込まれています。
「労働力人口」とは、15歳以上の就業者だけではなく、仕事に就いていなくとも求職活動を行っている失業者の方も含まれます。
内閣府が2014年に発表した「2060年に向けた長期の労働力人口予測」では、女性や高齢者の労働参加が進み、出生率が回復した場合でも、5407万人(2013年比 18%減少)と予測しています。
その上で出生率が現状維持の場合であれば、4792万人(2013年比 27%減少)となります。
企業の経営資源は、ヒト、モノ、カネ、情報などと言われる通り、その筆頭にはヒト、つまりは、労働力の確保が重要視されています。
にも拘わらず、そのベースともなる「労働力人口」が大幅な減少傾向にあります。
そのため、今後は、女性や高齢者の労働参加が如何に重要なことであるか理解できるかと思います。
本件も含め、人事は経営戦略に深く関わり、その実現に寄与する「戦略的人的資源管理(戦略人事)」が重要視されています。
|シニア人材の活用
仕事を二分する考え方に「マックジョブ」と「クリエイティブ」があります。
「マックジョブ」とは、マニュアルに沿ったルーチン業務であったり、機械的な動作を繰り返す単調な業務などを指します。
大量消費市場に対応する大量生産の時代ならば、そのような仕事も十分にありました。
しかし、製品やサービスの価値に注目される市場への変化とパソコン、AI(人工知能)、Iotなどの機械化、オートメーション化によって、これらの仕事は減って行くと言われています。
対して、「クリエイティブジョブ」とは、AIやIotなどには任せることのできない人間の創造性を伴う業務です。
ところが、この手の業務で成果を出すには、どうしても経験値が高くなければ難しいと言えます。
現在、ベンカンの正社員定年は、満60歳であり、そこから、満65歳までが継続雇用となります。
しかし、現実的には、満65歳を超えても、健康に支障がない範囲で再雇用により就業しているシニア人材もおります。
シニア人材が従事する仕事は、正に「クリエイティブジョブ」です。
ベンカンであれば、経営企画、研究開発、マーケティング、開発営業、品質保証・管理などとなります。
シニア人材の多くは、若い頃に自らの力で成果を出して来た方々です。
現在では、継続して、その能力を発揮していただきながら、後継者育成、技能継承にも従事していただいております。
|サクセスフル・エイジング
厚生労働省が公表している「平成28年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳に達しています。
つまり、現在の日本における一般的な就業定年の60歳以降も、男性では20年以上、女性では25年以上の人生が残っていることになります。
アメリカで生まれた考え方に「サクセスフル・エイジング」があります。
これを日本語で解釈するのは難しいところですが、「老後の生きがい」であったり、「幸福な老い」と捉えて良いのかと考えます。
アメリカや日本の研究者の意見によると、「サクセスフル・エイジング」は、長寿、生活の質向上、社会貢献などで構成されると考えられています。
生活の質を考えた場合、仕事も、それを高める要素であると思います。
また、運動、音楽、絵画など様々な趣味も、その要素かと思います。
また、興味深い要素が「社会貢献」です。
「社会貢献(Productivity)」とは、有償労働、無償労働、相互扶助、ボランティア活動、保健行動などであると考えられています。
特に「有償労働」と言う価値観は、アメリカ人と言うよりは、日本人特有の考え方で構成に加えられたとも言われています。
仕事に対して「生涯現役」などと言う想いは日本人ならではの労働に対する倫理観や美意識のようです。
実際、内閣府(平成26年)の報告では、日本人の高齢者の内で「働けるうちはいつまでも働きたい」という人が28.9%であり、働きたい年齢に制限を設けている群を加えた場合には、実に71.9%の高齢者が就労に意欲的であることが分かっています。
日本が抱える問題である「労働力人口」の減少と、高齢者の高い「有償労働」意識を良い意味で依存し合うことは有益であると捉えます。
ベンカンとしてもサクセスフル・エイジングを捉え、単なる労働力確保ではなく、後継者育成やシニア人材の生活の質向上や社会貢献も考えた戦略人事を推進して行きたいと思います。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 取締役 最高執行責任者(COO) 兼 執行本部 本部長