マネジメント「行動分析学」
- 2012.05.22
|マネジメント
人は一人で成せる目標には限界があります。
それ故に、より大きな目標を達成させるために、同じ意志を持った個人が集って組織を形成します。
ピーター・F・ドラッカーは、その著書である「マメジメント 基本と原理」の中で、「マネジメントは、組織に特有の使命、すなわち、それぞれの目的を果たすために存在する。」と示しております。
しかしながら、目標達成に対する意志が同じであっても、それを実現させるための方法論は、個人それぞれです。
また、それぞれの能力も均一ではありませんし、それぞれに、長所もあれば、欠点もあります。
それ故に、組織の存在意義を高めるためにも、マネジメントを機能させ、それぞれの長所を活かし、それぞれの欠点を補い合いながら、より大きな目標を達成させることが大切です。
その意味でも、様々な行動が、どの様な環境条件下で学習されるのかを分析し、新しい適応の仕方を研究する「行動分析学」が注目されています。
これまでにも、企業だけではなく、学校、スポーツ、医療、福祉など様々な分野においても活用されている理論でもあります。
|行動分析学
行動分析学で最も大切な概念の一つは「好子(こうし)」と呼ばれるものです。
「好子」とは、前え向きな行動の直後に「出現」することで、その「行動」を増加(強化)させる機能を持つものです。
例えば、「良い行動」をしたら直ぐに「讃える」などをすることで、その行動を繰り返すようになります。
当然、「讃える」などをしなければ、その行動を止めてしまうことを意味します。
また、注意しなければならないのは、誰でも讃えた方が、行動を促すとは限らないのです。
讃えられることで、天狗になり、逆に行動を止めてしまう者もいます。
逆に叱られることで、反骨心が芽生え、「良い行動」につながる者もします。
つまり、褒めて伸びるタイプと叱られて伸びるタイプがいると言うことです。
対して、「嫌子(けんし)」と呼ばれるものがあります。
「嫌子」とは、後ろ向きな行動の直後に「出現」することで、その「行動」を減少(弱化)させる機能を持つものです。
例えば、「悪い行動」をしたら直ぐに「叱る」などをすることで、その行動を止めるようになります。
当然、「叱る」などを止めると、また、その行動を繰り返してしまいます。
また、注意しなければならないのは、誰でも叱った方が、行動を抑制するとは限らないのです。
叱られることで、反発して行動がエスカレートしてしまうケースもあると言うことです。
更に叱られることで萎縮してしまい、「良い行動」までもを止めてしまう場合もあります。
|行動の強化と弱化
行動の直前から直後の状況の変化によって、行動が繰り返されるようになることを「強化」、抑制されるようになることを「弱化」といいます。
そこから導かされた、4つのパターンは、行動分析学による行動分析の基礎となります。
好子の「出現」 → 行動の強化(繰り返される)
好子の「消失」 → 行動の弱化(やめる)
嫌子の「出現」 → 行動の弱化(やめる)
嫌子の「消失」 → 行動の強化(繰り返される)
行動分析学では、行動を「強化」または「弱化」させる「好子」や「嫌子」の「出現」と「消失」の組み合わせで、行動の原因を明らかにして行きます。
ここから、各分野において、対象となる方々の行動の原因を明らかにして、対応策に活用されている訳です。
例えば、前向きな行動を取った人の行動を直ぐに褒めたとします。
すると好子が出現し、その前向きな行動を繰り返すことになります。
しかし、すべてが前向きな行動でなかったために、一部の後ろ向きの行動を比例したとします。
すると嫌子が出現して、場合によっては、前向きな行動まで止めてしまう可能性もあります。
逆に、後ろ向きな行動を取った人の行動を直ぐに叱ったとします。
すると嫌子が出現し、すべての行動を止めようとします。
そこから、僅かであれ前向きな部分を褒めると好子が出現し、後ろ向きな行動まで改善される場合もあります。
成果を出したことが、その後の行動に必ずしも良い影響が出るとも限りません。
逆に失敗したことが、その後の行動に良い影響をもたらすこともあり得えます。
如何に好子を出現させ、嫌子を消去させるように導くかが重要となります。
|マネジメントへの応用
組織が成果を高めるためのマネジメントを司るのがマネジャーである管理職達です。
管理職者には必ず部下がおりますので、その部下から成果を高めるための行動を引き出さなければなりません。
それも、指示したことだけではなく、能動的に主体性を持った行動でなければなりません。
更にそれが、一過性ではなく、徹底して継続されたものである必要があります。
人には、「現状維持バイアス」と呼ばれる「現状を現状のまま維持したい無意識の欲求」があると言います。
何の刺激も「出現」しなかれば、現状のままの妥協した行動を繰り返します。
そこで、管理職者は、部下の行動をチェックし、成果が高まる行動を引き出せす場づくりのために部下に「ホウレンソウ」を実施させなければなりません。
そして、その場において、「好子」や「嫌子」を「出現」させる必要があります。
しかし、「ホウレンソウ」が出来なかったり、一時的に出来ても徹底できない者がいます。
そこで、確実に「ホウレンソウ」を徹底させるために、組織内でルールづくりをすることを促しております。
①リマインド型:行動する前・期限が来るまえにチェックする。
②アフター型:行動した後・期限が過ぎてからチェックする。
③累積型:結果を統計として集約しながら、定期的にチェックする。
また、「ホウレンソウ」の場であっても、「好子」や「嫌子」を「出現」させることができない管理職者もおります。
その意味でも、如何に管理職として相応しい人材を育成するかも大きな課題となっております。
今後も、行動を司るマネジメントを継続して行きたいと考えております。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長