マーケティング「ブランディング」
- 2012.12.25
|マーケティング
未だに日本では、マーケティングのことを複雑に考えたり、市場調査のことだとか、営業だけのことだとか誤って捉えられている方々が少なくありません。
ピーター・F・ドラッカー氏は、「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」と示しています。
また、フィリップ・コトラー氏は、その著書である「コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版(2001年)」の中で、実にシンプルに「ニーズに応えて利益を上げること」と定義しています。
日本の代表としては、理央 周 氏が、その著書である「なぜか売れるの公式(2014年)」の中で、「自然に売れる仕組みをつくること」と定義されています。
ドラッカー氏が、企業の目的は「顧客の創造」であり、そのために「マーケティング」は欠かせない機能であると記載された「マネジメント-課題・責任・実践」が出版されたのは、1973年です。
以降、多くの経営者に影響を与え、40年経った現代においても、その理論は変わっておりません。
そして、マーケティングには、訴求させたい情報を如何にして人の記憶に留めさせるかが非常に重要になってきます。
|記憶
人の記憶について考えます。
学生時代を思い出せば、何かを覚えようとしたとき、それが容易ではないことは誰にも理解できるかと思います。
記憶には、それを司る脳を基準とした「外部記憶」と「内部記憶」があるとされます。
つまり、「外部記憶」とは、脳の中にない記憶であり、「内部記憶」とは脳の中に蓄積された記憶です。
そもそも、脳の中には元々は情報はありませんので、何らかの手段で「外部記憶」から情報を得ることになります。
本人からしたら知らない情報である「外部記憶」を得ようとするならば、インターネットや参考書などで調べたり、知っている方に尋ねる以外に手段はありません。
さらに、「内部記憶」には、「短期記憶」と「長期記憶」があるといわれています。
「短期記憶」は、アメリカの心理学者 W.ジェームズが一次的記憶(primary memory)とも名づけている通り、比較的短い、秒単位の時間しか保持されない記憶で、何れ「長期記憶」や「外部記憶」に移動してしまいます。
また、ワーキングメモリーとも言えるように、活性化されている記憶ですので、何らかの問いに対して迅速に答えが出ます。
対して、「内部記憶」にはあるものの、なかなか思い出せない記憶があります。
これが、「長期記憶」です。
「長期記憶」ですが、「短期記憶」に比べて長い時間保持されますが、なかなか想起されません。
さらに「内部記憶」ですが、何らかの刺激を与えないまま放置していれば、何れ「外部記憶」に戻ってしまいます。
つまり、完全に忘れてしまいます。
実験により、人の脳の記憶の忘却率を導き出したのが、「ヘルマン・エビングの忘却曲線(右図)」と言う理論です。
それによると、20分経過すると42%、1時間経過すると56%、1日経つと、74%も忘れてしまうといいます。
その後、1週間だと77%、1ヶ月だと79%であることから、常に短期記憶に留めておくには、日々のフォローアップが欠かせません。
その意味でも、メモを取るなどは、忘却してしまわないための基本的な予防策であることも分かります。
|AIDMAモデル
マーケティングの考え方の中で、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理状態のプロセスを法則化したのが、「AIDMAモデル」です。
「AIDMA(アイドマ)モデル」とは、「Attention(注意)」、 「Interest(興味・関心)」、「Desire(欲求)」、 「Memory(記憶)」、「 Action(行動)」の頭文字を取ったもので、1920年代にアメリカのローランド・ホール氏が提唱しました。
企業としては、如何にして競合他社と比較した場合に、自社の製品やサービスを思い出していただけるかが重要となります。
その意味でも、日頃から、消費者の「内部記憶」の更に「短期記憶」に自社の製品やサービスの情報を定着させておくことが重要となります。
これは、「純粋想起」ともいわれ、さらに一番最初に思い出していただくことを第一想起といいます。
故に各企業は、競合他社の製品やサービスと区別した要素の情報としてブランドを掲げるのです。
マーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラーは、ブランドを次の様に定義しています。
「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組みあわせ」
自社の製品やサービスを消費者に第一想起して欲しいのであれば、その象徴であるブランドを構築させることが重要です。
そして、そのブランドの価値を高める地道な取り組みと、それを消費者に伝えるためにAIDMAやAISASなどの購買プロセスに沿って、消費者に対して他社と区別した製品やサービスの情報を発信して行かねばなりません。
|ブランディング戦略
マーケティングにおけるブランディング戦略とは、この記憶のメカニズムに則って、如何にして消費者の短期記憶に留めていただくかの取り組みです。
そして、消費者の購買機会に、競合他社の製品やサービスと区分されることで、第一想起していただくことを目的とした取り組みです。
そのためにも、そのブランドが独自に訴える明確なブランド・アイデンティティーが必要となります。
例えば、ベンカンでは、「ステンレス配管のベンカン®」をブランドとして掲げて訴求させていただいております。
また、ミッションである「現在だけではなく未来を考えた配管の開発と供給を通して信頼あるライフラインの構築をご提案いたします」を象徴するブランドとして、「SUSTAINABLE LIFELINE®」を立ち上げました。
サステナブルとは、持続性を意味し、「持続性のある配管=ステンレス配管」をご提供できるメーカーとして歩んで行く決意の宣言でもあります。
このブランドの特徴は、製品やサービスの機能的便益(優秀性やコストパフォーマンスなど)を訴求するものではありません。
それらも含めて、ベンカンのあり方が情緒的、自己表現的、社会的に便益と第一想起していただく必要があります。
実際に、それに相応しい存在になり切れているかと言われれば、まだまだです。
だからこそ、決して、妥協することなく、今後も、顕在的ニーズ、潜在的なニーズに臨機応変に対応し、皆様のご期待にお応えできるように継続的に努めてまいります。
そして、より多くの皆さまに、「ステンレス配管ならベンカンですね。」と第一想起していだける立場になりたいと思います。
また、それぞれのブランドを企業として財産であるとの意思表示から商標登録しております。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長