戦略人事「外国人技能実習生制度」
- 2019.09.04
|戦略人事
企業は、その目的を果たすために、経営理念に基づいた戦略を立案し、それに沿って事業活動をマネジメントします。
そして、それらの活動には、資金調達、販売、人材管理、経営管理などの諸々の力の集合体である経営資源が不可欠となります。
経営資源とは、一般的にヒト、モノ、カネ、情報といわれています。
この経営資源を必要な部署や取り組みに供給するのも、インフラストラクチュアの取り組みとなります。
なかでも、筆頭の「ヒト」、つまり人事の重要性が高まっています。
しかしながら、そのベースともなる「労働力人口」が大幅な減少傾向にあることが重大な問題となっています。
対して、ベンカンの本社・MJ工場のある群馬県は、全国的に見ても、総人口に対する外国人の割合が高い地域です。
総務省が発表した2019年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査で群馬県の外国人の占める割合2.86%は、東京都(4.01%)、愛知(3.35%)に次ぎ全国3位でした。
特に、モノづくりの街として発展した太田市、伊勢崎市、大泉町などの東毛地域の割合が高いとされています。
これは古くから、この地域が労働力不足を補うために海外からの労働者を受け入れてきたことが背景にあります。
また、送り出し側の諸国にとっても、日本での労働は、産業の発展が著しい途上国にとっては、自国の技能向上に貢献する利点がありました。
ベンカンでは、人材と組織の側面から変革をリードしていく戦略的人的資源管理(以下、戦略人事)を重要視して推進しています。
その一環としても、この外国人の皆さんの労働力を如何に活かすかも重要な課題となっています。
|外国人技能実習生制度
群馬県の東毛地域に限らず、全国的に外国人の労働者の受け入れは進みました。
その後、これらの取り組みは、1960年代後半頃から海外の現地法人などの社員研修として発展します。
そして、この社員研修が評価され、それを原型として、1993年に外国人技能実習生制度が制度化されました。
本制度の目的・趣旨は、「我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』に寄与するという、国際協力の推進」です。
その内容は、外国人の技能実習生が、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。
技能実習法 法第3条第2項 に明記されている通り、決して労働力の需給の調整の手段として行われてはなりません。
① 技能実習生は、修得技能と帰国後の能力発揮により、自身の職業生活の向上や産業・企業の発展に貢献
② 技能実習生は、母国において、修得した能力やノウハウを発揮し、品質管理、労働慣行、コスト意識等、事業活動の改善や生産向上に貢献
③ 我が国の実習実施機関等にとっては、外国企業との関係強化、経営の国際化や社内の活性化に貢献
期間は最長5年とされ、技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行われます。
技能実習の区分は、企業単独型と団体監理型の受入れ方式ごとに、入国後1年目の技能等を修得する活動(第1号技能実習)、2・3年目の技能等に習熟するための活動(第2号技能実習)、4年目・5年目の技能等に熟達する活動(第3号技能実習)の3つに分けられます。
第1号技能実習から第2号技能実習へ、第2号技能実習から第3号技能実習へそれぞれ移行するためには、技能実習生本人が所定の技能評価試験(2号への移行の場合は学科と実技、3号への移行の場合は実技)に合格していることが必要となります。
また、第2号技能実習もしくは第3号技能実習に移行が可能な職種・作業(移行対象職種・作業)は主務省令で定められています。国際研修協力機構(JITCO)サイトより引用
|制度の導入
「外国人技能実習生制度」をベンカンが導入したのは、2014年となります。
ベンカンの生産拠点は、国内のMJ工場(群馬県太田市)と海外のベンカン・ベトナムの2拠点です。
双方には、それぞれ特徴があります。
例えば、ベンカン・ベトナムのあるベトナムは、日本の平均年齢が45.9歳であるのに対して、ベトナムは、29.8歳と16.1歳も若年社会となっております。(参考:国連「World Population Prospects The 2015 Revision」)
これは活気があり労働力が豊富ですが、経験が豊富なスキルの高いスタッフが少ない問題があります。
しかしながら、経験の豊富な日本人スタッフを教育のためにベトナムに送り込むのにも限界があります。
そこで、「外国人技能実習制度」を導入するに至りました。
その特徴は、基本的にベンカン・ベトナムに勤務するスタッフから募集することです。
これまでの傾向として、毎年、募集人数よりも多くの応募が寄せられるために、面談などで選考して受け入れております。
また、既にベンカン・ベトナムでの勤務経験があるため、当初から高いレベルの技能取得に取り組むことが出来ています。
2014年の1期で6名を受け入れ、定期的な入れ替えがあるものの、現在は12名がMJ工場で勤務しております。
実習に関しましては、基本は、MJ工場の現場で従事するOJT(On-the-Job Training)となりますが、「技能検定試験」や「日本語能力試験」の合格に向けた特別研修も実施しております。
また、日本人スタッフとのコミュニケーションの機会として、花見、カラオケ、釣り堀、バーベキューなど様々な催しも開催しています。
実習期間を終えて帰国した際には、日本のMJ工場で学んだ技能をベンカン・ベトナムで存分に発揮して、ベトナムおよびベンカンの発展に貢献してくれることと期待しています。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長