経営「アイデンティティ」
- 2012.09.01
|経営
企業とは、社会の機関であり、その社会やコミュニティ、顧客のニーズを満足させるために存在します。
翻せば、企業とは、社会に貢献することが、その責任であり、その目的は、「顧客の創造」にあります。
仮に、社会においての存在価値がないとなれば、顧客に見向きもされなくなり、いずれ、淘汰されることを意味します。
心理学や社会学の分野に「アイデンティティ(identity)」という概念があります。
その概念とは、「自分は何者なのか」であり、「自分らしさ」のことです。
しかし、「アイデンティティ」を勘違いしている人が少なくありません。
「アイデンティティ」は、他人との一方的な差別化とは違います。
そもそも、人は、他人とは根本的に「違う存在」です。
「違う存在」であるからこそ、「自分が何者なのか」を認識し、他人との違いである「自分らしさ」を明確にすることが大切です。
「アイデンティティ」とは、その「自分らしさ」を意識して活かすことで、社会に貢献できるものと捉えてはどうかと思います。
これは、企業とて同様です。
そのためにも各企業は、コーポレートアイデンティティーとも表現されるような、独自の企業理念を掲げています。
|コアコンピタンス
企業が社会において、その存在意義を示すに不可欠なのが、「コアコンピタンス(Core competence)」です。
各企業が似たり寄ったりの理念を掲げたり、製品や技術、サービスを提供しても、需要と供給のバランスから限られた企業しか顧客を創造することはできません。
かといって、独自の価値を提供できたとしても、直ぐに他社に模倣されてしまうようだと意味がありません。
故に「コアコンピタンス」には、他社が容易に模倣できないコア技術などの価値であることが重要となります。
企業にとっては、この「コアコンピタンス」を持っているのか、持っていないのかが将来性を左右します。
ベンチャー企業であれば、当然、先に立たねばならない部分です。
また、既存企業で「コアコンピタンス」がないと嘆く前に、少なくとも、育てあげる種があるはずです。
また、企業の目的が、「顧客の創造」以上、「コアコンピタンス」は、顧客が望む価値である必要があります。
これは、企業の強みとして、「USP(Unique Selling Proposition)」あるいは「バリュープロポジション」とも呼ばれています。
|アイデンティティ
人の「アイデンティティ」があるのと同様に、企業版の「コーポレートアイデンティティ(CI:Corporate Identity)」もあります。
「アイデンティティ」とは、「自分は何者なのか」であり、「自分らしさ」のことでした。
企業にとっての「自分らしさ」とは、正に「コアコンピタンス」であるといえます。
故に、「コーポレートアイデンティティ」とは、企業の「コアコンピタンス」を顧客に対して訴求するために、それを明確にし、イメージの統一を図る取り組みと解釈して良いかと考えます。
その戦略は、大きく3つから成り立っているとされています。
(1)マインドアイデンティティ(MI)
「コアコンピタンス」を言語化した「アイデンティティ」に落とし込んだもの。
要素:企業理念、ミッション、ビジョン、スローガンなど
(2)ビジュアルアイデンティティ(VI)
言語化されたマインドアイデンティティを視覚に訴えるアイデンティティに落とし込んだもの。
要素:ロゴ、コーポレートカラーなど
(3)ビヘイビアアイデンティティ(BI)
社員やスタッフがマインドアイデンティティから落とし込まれた、その企業らしい一貫した行動特性。
要素:社風、行動指針、マネジメント、文化、思想など
これら一貫したコーポレートアイデンティティをコアコンピタンスと紐づけることで、企業の「自社しか持たない強み」を訴求し、ブランドイメージを形成させます。
つまり、コアコンピタンスを創造し、磨き上げ続けることと、コーポレートアイデンティティーを結び付けるブランディングなどのマーケティング戦略が重要であると考えます。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長