マーケティング「イノベーター理論」
- 2018.11.30
|イノベーター理論
マーケティングに対する定義は様々ですが、「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」とは、マネジメントのピーター・F・ドラッカー氏の言葉です。
つまり、売れる仕組みをつくることがマーケティングの役割ともいえます。
そのためにも、様々な理論による分析も必要となります。
新しい製品やサービスを市場に投入してから普及(100%)するまでの時間(タイムライン)において消費者をタイプ別に分類する「イノベーター理論」を、1962年に米・スタンフォード大学の社会学者であるエベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱しました。
この理論に「プロダクトライフサイクル」を合わせることで、新しい製品やサービスを市場に投入する際のターゲットがどのような消費者層であり、それに基づいて、どのようなマーケティング戦略を講じるべきかの参考となります。
1.イノベーター 2.5%
「イノベーター(Innovators)」とは、革新者とも呼ばれる通り、トレンドに非常に敏感で、その新しい製品が実用的であるかに関わらず多少のリスクも顧みず購入する消費者層を指します。
そのため多くの人がその製品の良さに共感するとは限りません。
これらの消費者層は、普及率2.5%とされています。
2.アーリーアダプター 13.5%
「アーリーアダプター(Early Adopters)」とは、本格的な初期採用の消費者層です。
トレンドに敏感で常に新しい情報を収集行い、その製品が提供する新しいベネフィットに着目して論理的に購入判断します。
ベネフィットとは、製品を利用することで得られる有形、無形の価値です。
ある意味、「アーリーアダプター」に支持されて初めて市場に受け入れられたとも言えます。
新しい製品が普及する上で、他の消費者層への影響力が強いことからオピニオンリーダーとも呼ばれ、普及率13.5%とされています。
3.アーリーマジョリティ 34.0%
「アーリーマジョリティ(Early Majority)」とは、製品やサービスを購入する上で比較的慎重派な消費者層です。
しかし、慎重と言いながらも、「アーリーアダプター」の動向を見ながら平均よりは早くに購入する傾向にあります。
ブリッジピープルあるいは、前期追随層とも呼ばれ、普及率34.0%とされています。
4.レイトマジョリティ 34.0%
「レイトマジョリティ(Late Majority)」は、新製品に対して比較的懐疑的だったり、購入に際して慎重な消費者層です。
それだけに周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする傾向があるためフォロワーズあるいは、後期追随層とも呼ばれ、普及率34.0%とされています。
5.ラガード 16.0%
「ラガード(Laggards)」は、世の中や他人の動向に関心が薄く、トレンドに左右され難い最も保守的な消費者層です。
故に遅滞者と言われたり、いわゆる文化レベルになるまで購入しませんので伝統主義者とも言われ普及率16.0%とされています。
しかしながら、「イノベーター理論」は、あくまでも傾向であり、マーケティング戦略を策定する際には、ターゲット市場によって消費者層の傾向に違いがある可能性があることを「普及率16%の理論」や「キャズム理論」を通して理解する必要もあります。
|普及率16%の理論
イノベーター理論から、「イノベーター」はリスクを度外視して、重要視すべきは先進的・革新的な製品の購入そのものです。
新製品が与えてくれる価値、メリット、効果などの実用性に対する優先度は高くありません。
対して、次に普及するとされる「アーリーアダプター」は、新しいベネフィットに着目して論理的に購入判断します。
また、その新しいベネフィットを自らのネットワークを通じて伝えてくれることから、他の消費者層への影響力が強いと言われています。
「イノベーター」と「アーリーアダプター」を合わせても普及率の16%でしかありません。
しかし、この2つの消費者層への普及のさせかた次第で、次の最も普及率の大きな消費者層である「アーリーマジョリティ」や「レイトマジョリティ」へつながるか否かを左右します。
そのため新しい製品を普及させるためのセオリーとして、最も大きな影響力を持つ消費者層である「イノベーター」と「アーリーアダプター」に普及させることを重要視したのが「普及率16%の理論」です。
対して、アメリカのマーケティングコンサルタントのジェフリー・ムーア(Geoffrey Alexander Moore)は、1991年 著書である「キャズム(原題:Crossing the Chasm)」の中で、仮に「イノベーター」と「アーリーアダプター」に普及したとしても、次の「アーリーマジョリティ」に普及させるには「大きな溝=キャズム」があるのだとしています。
なぜならば、「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」とでは考え方と行動が正反対であるからとしています。
まず、「アーリーアダプター」はは新しい技術に着目し、その技術を自分のものにすることによって、そのベネフィットを他の消費者層に伝えます。
最先端の技術を持つことによって競合より優位になるためには、ある程度のリスクを負ってでも購入します。
対して、「アーリーマジョリティ」は、リスクを嫌い、費用対効果を最重視します。
最先端とはいえ未熟な技術を取り入れるために試行錯誤することを可能な限り避けようとする傾向があります。
それ故に、先行して購入した消費者たちの動向を窺ってからでなければ購入しようとしません。
つまり、「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間には、リスクを受け入れるか、受け入れないかのキャズム(深い溝)があるのだとしたのが「キャズム理論」です。
「イノベーター」と「アーリーアダプター」で構成される消費者層を「初期市場」、アーリーマジョリティ以降の消費者層を「メインストリーム市場」と区分されています。
「キャズム理論」では、「アーリーアダプター」のオピニオンリーダーとしての役割にのみ期待するのではなく、「アーリーマジョリティー」に対して「ホールプロダクト」を用意することと、「アーリーマジョリティー」の中でターゲットを絞ることが必要とされます。
「ホールプロダクト(whole product)」とは、新製品を普及させるための付随製品やサービスのことをいいます。
また、「アーリーマジョリティー」とて、様々な痛みをもった顧客がいますので、そこを絞り込んで普及させ広げて行くべきとしています。
次の動画は、1人のイノベーターから始まり、キャズムを超えたことで起こったユニークなムーブメント(movement)の一例です。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長