マネジメント「エンボディメント」
- 2019.01.24
|マネジメント
「蒔いたものしか収穫できない。」
このフレーズは、自己啓発本として超有名な「七つの習慣」の中に登場する「農場の法則」です。
農場には、即効性のある解決策など存在しません。
種を蒔き、 肥料を与え、水をやり、成長を支え、そして収穫されます。
つまり、種を蒔かずして、決して収穫することはできないということです。
さらに、どんなに一生懸命に取り組んだからと言って、台風などの不可抗力により、収穫が叶わない可能性だってあります。
これは、ビジネスにも通じることです。
先行き不透明な環境下においても、常に、成果を上げることが求められるマネジメントです。
成功の可能性が高い事業と目論んで、経営資源を投入したところで、成果に結び付くとは限りません。
故にその不確実性な中で成果を高めようとする経営者やマネジャーなどのビジネスパーソンは、常に精神的なストレスを抱えることになります。
|身体を鍛える意味
「病は気から」ということわざがあります。
病気は気持ちの持ちようによっては、その症状は、良くも悪くもなるということです。
この場合、身体が精神にコントロールされた状態を意味します。
もちろん、無理は禁物ですが、誰にでも思い当たることがあろうかと思います。
故に常日頃から、ストレスのない穏やかな精神状態が望ましいのだともいえます。
しかし、先述の通り、ストレスのない環境の方が不思議なくらいの現代です。
最近は、経営者の中で身体を鍛えられる方が増えているといわれています。
事実、経営者あるいはビジネスパーソン向けの筋トレ本がベストセラーになるくらいです。
経営者に限らず、ビジネスパーソンが身体を鍛えるメリットはどこにあるのかです。
身体を鍛えると言う行為、つまり、「筋トレ」は、そのやり方さえ間違っていなければ、やればやるだけ確実に筋肉量が増え、より重いバーベルを挙上できるようになり、体脂肪率などの数値が変わります。
これは、常に精神的なストレスを抱え、メンタルヘルスの重要度の高い経営者やビジネスパーソンにとって、精神的に非常に良い行為といえます。
また、確実に成果が上がるということは、モチベーションの向上に繫がり、自ら、より負荷の高いメニューに挑戦しようとします。
本来、モチベーションとは与えられるものではなく、自ら覚醒させるものだと言われます。
また、ハードな筋トレ中に、ビジネスのことを考える余裕はありません。
結果的に、肉体的なメリットだけではなく、この自分自身を追い込む行為が、ビジネスのストレスから離れた精神的な無の状態であるマインドフルネスにも導かれるようです。
以前、脳科学者の茂木健一郎さんが、ストレスのかかる現代人の脳へのプレッシャーを克服する方法は「苦しいときにも、あえて笑うこと」だとお話されていました。
例えば、口角を上げるだけでもポジティブになれるのだそうです。
つまり、これは精神が身体にコントロールされた状態です。
これは、一流スポーツ選手でも多くが取り入れているルーティーンにも言えます。
つまり、プレー前の脳へのプレッシャーを克服するために、毎回、同じ動作をして精神を落ち着かせる訳です。
野球のイチロー選手が打席に立つ前にバットを前に出す動作などがそれに当たります。
この様に人間の「身体状態」と「精神状態」は密接な関係にあると考えられます。
茂木健一郎さんが身体の状態、つまり行動によって精神がコントロールされることを「エンボディメント(身体性)」と紹介されていました。
つまり、人間の精神面をコントロールするには、脳そのものへの働きかけだけではなく、身体を通じて(身体を媒介にして)働きかけるということも有効だということです。
これは、日本の武道の教えとして精通している心技体にも通じる概念であると捉えています。
経営者やビジネスパーソンの中で流行している筋トレですが、このような「エンボディメント」効果もあるのだと思います。
また、悩んでばかりでなかなか行動に移せない人をよく見かけます。
おそらく本人の中には、様々な葛藤があるのだと思います。
しかし、答えを出せないまま頭の中だけで考えつづけることの方が精神的に悪いと言えます。
ならば、まずは、身体が脳をコントロールするという「エンボディメント」を信じて、成果を気にせずに行動してみることが、結果的に次の改善行動につながるのだとも言えそうです。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長