ドラム・バッファー・ロープ
- 2017.12.19
- カテゴリ: 製造|Manufacturing
|TOC(制約理論)
事業とは顧客にとっての価値を創造する活動であることを原理原則とした「バリューチェーン(Value Chain)」の最適化を進める上で、「TOC(Theory of Constraints:制約理論)」は重要な考え方になると捉えております。
その目的は、生産を通じて、「スループット(売上高)」を増やしながら、同時に「在庫」と「業務費用」を減らすこと・・・つまり、利益を増やすことです。
ポイントとなるのが、処理能力が与えられた仕事と同じか、それ以下のであることから、全体の生産能力(スループット)に悪影響を及ぼす工程です。
一般的に、「ボトルネック」と呼ばれる工程ですが、悪の様に扱われますが、ここでは、単なる「事象」であると捉えます。
故に撲滅させると言うよりは、処理能力を高める取り組みを行います。
また、「ボトルネック」ではなく、制約工程(CCR:Capacity Constrained Resource)と表現したりもします。
|ドラム・バッファー・ロープ
TOCを推進する手法の一つが「ドラム・バッファー・ロープ(drum・buffer・rope)」です。
これは、生産工程を、進む速度の違う人を縦一列に並べて進む隊列の様子に例えた考え方です。
この場合、後ろの人の進む速度は、前の人を追い抜かさない限り、前の人の進む速度に依存します。
例えば、歩くのが遅い人の後続は、仮に歩くのが早い人であっても、早く歩くことはできません。(依存的事象)
また、本来、歩くのが早い人であっても、天候や道路の状態など何らかの状況変化により、一定速度で歩けるとは限りません。(統計的変動)
結果、どうなるのかと言うと、この隊列は、目的地までの到着(スループット)が遅れたり、先頭から最後尾まで長さ(在庫)が長くなってしまったり、予想外の労力(業務経費)を要したりする可能性があるわけです。
「ドラム」とは、音楽で使う「ドラム」です。
速度を依存する、もっとも歩くのが遅い人に合わせて「ドラム」を鳴らし、全体の同期を取ることを意味します。
さらに、隊列の先頭から最後尾の人まで、一定の長さの「ロープ」を持って進むことで、隊列の長さが広がることを防ぐことを意味します。
隊列の人たちを互いに「ロープ」でつないで、「ドラム」の音に合わせることで、依存しなければならない歩くのが遅い人の速度に合わせ効率よく進ませる考え方です。
また、予測できない速度の変化に対応するために、「ロープ」を少し長くして、最も歩くのが遅い人が前を歩く人にぶつからないようにすることを「バッファ」としています。
これにより、最も歩くのが遅い人の速度を、他の人が原因で、遅れさせることを防ぐことができます。
|現場での取り組み
「ドラム・バッファー・ロープ」を現場に置き換えてみます。
まず、重要なのは、全体の生産能力(スループット)を左右する「ボトルネック」を特定することです。
その上で、「ボトルネック」を徹底活用し処理能力を全開させるかが重要となります。
次に「ボトルネック」の処理能力以上に合わせた資材や仕掛の投入調整です。
「ボトルネック」の処理能力以上の資材や仕掛を投入したら余剰在庫となってしまいます。
かと言って、バッファ(余裕)を持たせておかないと仮に、「ボトルネック」の前工程でトラブルがあった場合に、「ボトルネック」の処理能力に悪影響を及ぼしてしまいます。
これらを加味した適正な投入調整が必要です。
また、「ボトルネック」の後工程の処理能力を高め過ぎても、結局は「ボトルネック」は、その処理能力に追いつくことができません。
結果、後工程では、仕掛不足となり、生産が止まり、無駄な業務費用などが発生してしまいます。
そこで、「ボトルネック」の後工程では、「ボトルネック」の処理能力に合わせた処理能力に調整することが必要となります。
「ドラム・バッファー・ロープ」とは、TOCを推進する上で、「ボトルネック」の能力を最大化して、それを停めないことで生産工程のムダをなくすための有効な手法であると言えます。