塑性加工「金型」
- 2021.06.25
- カテゴリ: 製造|Manufacturing
|塑性加工
ベンカンの起源でもある溶接式管継手は、塑性加工技術にて1951年より生産を開始しました。
そして、その技術を流用することで、1975年よりモルコジョイント、1991年よりダブルプレス
の生産へとつながっています。
塑性(そせい)加工」は、「対象の金属材料に大きな力を加えて変形させることによって、目的とする形状に成形加工する」ことです。
その製法は、冷間曲製法、熱間曲製法、液圧バルジ製法など、製品の仕様に合った様々なものがありますが、必ず必要となるのがプレス機と金型となります。
プレス機とは、対象の金属材料に対して、作動油を媒体とした油圧などで、大きな力を加える設備です。
そして、もう一つの金型とは、プレス機からの大きな力を受け止め、対象の金属材料を目的とする形状に成形するための金属製の塊です。
|金型
金型ですが、小さいものでは手のひらサイズ、大きなものですと知りうる上では自動車くらいのものもあります。
また、形状は、製法によって様々です。
最も一般的な金型は、上下二分割になったものかと思います。
この金型を油圧などのプレス機に取り付け、上下に開いた金型の中に対象の金属材料(鉄やステンレスなど)をセットします。
プレス機を稼働させて、上下に開いていた金型が密着し、金属材料へ圧力が加わることで、金型の形状に成形されることになります。
金型の種類には正式名称がありませんので、各企業が、その製法に準じた名称を付けている場合がほとんどであると思います。
例えば、一例として次の様な金型の種類があります。
・ブランク型(打ち抜き)
・コンパウンド型(総抜き)
・面押し型(バリつぶし)
・ベンド型(曲げ)
・ドロー型(成形)
・バルジ型(バルジ)
・バーリング型(バーリング)
・リスト型(修正)
・トリミング型(外形切断)
・順送型(複合)
もちろん、成形が、一度のプレス工程で終えるとは限りません。
工程に乗っ取って、異なる金型で段階的に成形して最終形へと加工することになります。
|金型の構造
構造の基本となるのは製品図面です。
基本的には鉄のプレート(SS400、熱処理が必要な部分にはSK3、SKD11など)を使用し、バネやパンチなどは金型部品を組み込む場合もあります。
それぞれのプレートには金型設計者が意図した形状になるように加工(マシニング加工・ワイヤーカット加工・研磨・熱処理)が施され、それぞれの部品を設計通りに組み上げられます。
① 工程設定
製品図面を基に、加工特性(塑性・切削・使用設備能力・不具合対策など)を加味する
② レイアウト図
各工程の製品公差内でのネライ値を加味したものをCADで作図する。
③ 材質選定
金型部品の材質を工程に合わせたものを選定(硬度や熱処理後の特性)する。
④ 稼働設計
使用設備の仕様に合わせた金型構造にし、金型部品の加工設備の特性を加味した部品設計を進め、金型を組み上げやすい構造にする。
⑤ メンテナンス設計
量産現場での作業者が作業しやすい構造、消耗部品(交換頻度の高いもの)の設定とメンテナンス性を考えた構造にする。
一部分ですが、金型設計を進める上で必要な項目を抜粋しました。
生産性、不具合対策、メンテナンス性などを考慮しておかないと、完成してしまってからでは直せません。
製品形状の品質は、すべて金型設計でその後が決まるといっても過言ではありません。
|金型精度・メンテナンス
どんなに優れた金型を設計しても、現物の金型の制度が低ければ意味がなくなってしまいます。
金型は何十点、何百点もの部品構成によりできていますので、すべての精度が公差内であるのが大切であり、金型のコア部分(材料に接する部分)が意図した寸法でない場合、次のような不具合が発生してしまいます。
・製品寸法のバラつき
・金型内部にて摩擦異常(カジリ)の発生
・作業性の低下
このような事象は0.1ミリ(コピー用紙くらいの厚さ)の差でも発生する事があり、更に精密な金型もあります。
数十年前は、金型職人がヤスリで削って金型部品を成形したり、ケガキ線をひいて位置を決めたり、最終的な組み上げは感覚の部分が多かったようです。
対して現在は、自動で高精度の加工を施す加工機(マシニングやワイヤーカット)が登場しており、新聞紙厚より少ないバラつきのものが製作可能となっています。
それでも、まだまだ、職人技術的な要素が残っているのも金型です。
そのためベンカンにおいても、ベテランから若手への技能継承を進めております。
Yutaka ishizaki