マネジメント「エンパワーメント」
- 2012.12.29
|マネジメント
人は一人で成せる目的には限界があります。
それ故に、より大きな目的を果たすために、同じ意志を持った人たちが集って組織を形成します。
よく組織と比較されるのが集団です。
その違いですが、共有の目的を持って集まった組織に対して、集団は目的を持たないか、目的が共有されない烏合の衆となります。
目的が存在する以上、組織にとって、その目的を果たすことが使命となります。
当然、構成する個々も、それに貢献するように取り組むはずです。
また、そのために、組織では、個々が互いに円滑なコミュニケーションを取り、協力し合おうとする意志が欠かせません。
そして、この組織が、目的を果たせるように機能させるのがマネジメントです。
仮に、組織でマネジメントが機能していないとなると、そもそも共有されていた目的にギャップが生じたり、互いの業務や権限のコンフリクト(軋轢、対立)を起こしたりしてしまい、組織は崩壊してしまいかねません。
マネジャーの職務は、まるで、異なる形のたくさんのピースをハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものです。
|チーティングとコーチング
従来の日本の学校教育のスタイルは、教師のことをティーチャー(teacher)と呼ぶことからも「ティーチング」だと言われています。
「ティーチング(teaching)」は、学校教育だけではなく、企業などのマネジメント手法の一つとして一般的に使われて来ました。
その特徴は、「知っている人が知らない人に教える」というナレンジマネジメントです。
ナレッジとは知識のことであり、形式知といわれたりもします。
故に、初めての人や経験の浅い人に、基本を身に着けさせるために繰り返し教え込むには優れていると思います。
問題としては、一方的な押し付け、あるいは押し込み教育とも揶揄されることからも、自分自身で考えて行動する思考が高まり難いとも言われています。
実際、この「ティーチング」で教育を受けると、学生時代の試験などの定型化した問題を解くことには長けていても、社会人になってから経験のない突発的な問題への対応能力は養われ難いともいわれています。
対して、より実践的な人材の育成を目指した教育スタイルが、「コーチング(coaching)」です。
「コーチング」のコーチ(coach)の由来は馬車であり、 馬車が物や人を目的地へ運ぶ(導く)ことから、指導者を指してコーチと呼ばれるようになりました。
故に、ファッションブランドとしてのコーチ(COACH)のロゴにも、馬車が描かれています。
「コーチング」では、「教える」という行為はしません。
ポイントは対話です。
対話ですので、決して一方的なものではなく『双方向なコミュニケーション』となります。
この「問いかけて聞く」というヒント的な対話を通して、指導を受けた本人から自発的に様々な考え方や行動の選択肢を引き出します。
そして、結果的に指導された本人が徐々に自分で問題解決能力を身につけて行くこととなります。
最近、取り上げられることが多くなった、「アクティブラーニング」の場合の教師は、ティーチャーよりもコーチに近いと言えるかもしれません。
|エンパワーメント
「ティーチング」や「コーチング」は個人に対してのマネジメント手法でしたが、その仕上げが組織レベルの「エンパワーメント(empowerment)」であると捉えております。
組織は、個、一人一人の集合体です。
それ故にそれぞれに、それぞれの役割が課せられています。
目まぐるしく、社内外の環境が変わる現代において、指示待ちをしていたら、チャンスを逃したり、トラブルを回避することもできません。
従来から組織形態を対照的に表すものとして、ヒエラルキー組織とフラット組織があります。
ヒエラルキー型組織とは、社長、部長、課長、スタッフというように階層構造になっている組織形態のことです。
対してフラット組織とは、極端には社長の下は横一線のスタッフとなる組織形態となります。
「エンパワーメント」とは、「権限委譲」ともいわれる通り、組織の目標を達成するための意思決定権を現場に委ねることです。
しかし、単に委ねるだけでは、「丸投げ」行為となってしまいます。
そこで重要視されるのが、配下部署や個人の自律性の育成です。
そのためにも経営は、組織の目標を組織全方位に明確に示して共有させなければなりません。
また、配下部署や個人が主体性を持って能動的に徹底して行動できるような環境を整備して支援することも大切となります。
つまり、組織の自律性の育成と支援が、「エンパワーメント」であるといえるかと思います。
また、フラット組織をより具体化させた考えに2014年にフレデリック・ラルー氏が発表したティール組織があります。
その定義は、社長やマネジャーがマイクロマネジメントをしなくても、スタッフ個々が自分たちのルールや仕組みを理解して、目的のために独自に工夫し、意思決定することで組織の目的を果たせる組織といえます。
組織の理想は、このティール組織なのかもしれません。
しかし現状は、ヒエラルキー組織のトップダウンマネジメントと、ティール組織のポトムアップマネジメントの良いところを融合させた複合組織を目指したいと考えております。
それには、トップダウンマネジメントができる人材にエンパワーメントを進めたいと考えております。
同時に、ボトムアップマネジメントの出来る人材を育成するためのティーチングやコーチングなどの教育も進めて行きたいと考えます。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長