マネジメント「情報の具体化」
- 2017.12.02
|マネジメント
企業には、特有の目的を果たすことによって、社会において存在することの意義が求められます。
その目的あるいは、目標を果たすための機能がマネジメントです。
マネジメントでは、ヒト、モノ、カネ、情報などの様々な経営資源を活用することとなります。
しかしながら、それらの資源には、多能な要素があります。
例えば、人材であれば、それぞれの能力も均一ではありませんし、それぞれに、長所もあれば、欠点もあります。
それ故に、それぞれのメリットを活かし、それぞれのリスクを補い合いながら、効率的に成果に結びつける必要があります。
その意味でも組織において、様々な価値観を共有することは非常に重要です。
ところが、経験や勘に依存した情報は、曖昧で抽象的であるために共有する上で誤解を生じさせ易くしまいがちです。
それ故に、マネジメントでは、それらを如何にしてロジカルに置き換えて、共有させ易いシンプルなカタチにすることが重要となってきます。
|ID:Important Data
経験や勘に頼った抽象的な傾向が強く、それを共有したり再現することが難しいとされる代表がスポーツの世界かと思います。
対して、具体的な情報を駆使して科学的に進めていくIDという手法を用いたのが、プロ野球の故・野村克也氏かと思います。
野村克也氏と言えば選手としても三冠王になるなどの輝かしい実績を残されると共に監督としても、弱小チームを優勝させたり、選手育成あるいは再生など素晴らしい成果を上げられた方です。
IDとはImportant Dataの略で、 監督がチームを作り上げていく場合や選手がプレイする場合に、重要な情報を経験や勘に頼ることなく、ロジックを構築して具体化(言語・数値・図解など)することによって、それを駆使して科学的に進めていくという手法です。
そのために野村氏が選手やコーチに課したのが、自分が話したことやボードに書いた図解などをとにかくノートに書かせることだったそうです。
ある記事において、野村氏がヤクルトの監督を務めていた時代の主力選手が次の様なコメントをされています。
「野村監督の基本的な考えは目に見えないもの、形にならないものをどう捉えるかということなんです。速い球を投げる、打球を遠くに飛ばすといった目に見える能力は才能で限界が決まる。どんなにがんばってもイチローみたいにボールを捉えることはできない。でも野球はイチローがそろえば勝てるというものでもない。弱いチーム、才能で劣る選手が集まったチームが強いチームを倒すために何をするか。駆け引き、データの活用、心理を読んだ攻め、そうした無形の力を駆使して有形の力で上回るチームに勝つ。それが野村監督の根本にある考えで、それまで自分が教わってきた野球というものの考え方にはまったくないものでしたね。」
|情報の具体化
野村氏監督を務めたチームには、「野村ノート」と呼ばれたものがあったとされています。
組織で共有すべき情報は、曖昧で抽象的ではなく、言語、数値、図解などによって具体化させてアウトプットさせることが重要です。
これによって、初めて、目に見えないものや形にならないものが可視化、共有され、目的を果たすための問題意識を持つことが可能となります。
選手たちに配られた「野村ノート」には、野村氏の考えである組織理念や理論、技術などの情報が具体化されており、チーム内で共有されました。
また、野村氏は、「失敗と書いて成長と読むと教えている」と表現するくらいに「人間は失敗しないと覚えない。」といっています。
ところが人間は、20分経過すると42%、1時間経過すると56%、1日経つと74%も忘れてしまうのだといいます。(ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線)
そのためにも、書かないと忘れるために、特に失敗したことは忘れないように書き留めさせることを徹底させたのだそうです。
「書くことで人は伸びる」
如何に情報を具体化することが、マネジメント能力を高めることにつなげられるのかを再認識したいと思います。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長